JWF News 2月号 仕様の現地化

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【JWF News Vol.149】 仕様の現地化
2017年2月1日発行

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◇目 次◇

・巻頭言 仕様の現地化

・日本水フォーラムからのお知らせ
-【2月22日】シンポジウム『国連【世界水の日】記念・水未来会議2017』ご案内
-水の安全保障戦略機構「第15回基本戦略委員会」ご案内

・日本水フォーラムからの報告
-APWF第20回執行審議会を開催しました

・活動へのご支援・ご協力のお願いについて

・掲示板コーナー

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・巻頭言 仕様の現地化 代表理事 竹村公太郎

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機械式シャワートイレ
1月早々、マレーシアへ行ってきました。クアラルンプールで中央政府の水資源開発の担当者との打ち合わせを行い、その後ジョホール州政府の関係者や、マレーシア工科大学の水関係者への日本の技術のプレゼンを行うため、ジョホールバルへ向かいました。
クアラルンプールではたまたま5つ星のホテルに泊まることになったのですが、そこでびっくりすることがありました。

日本の水関連企業の活躍です。水関連企業といっても大規模なプラントメーカーではありません。トイレのメーカーです。
宿泊したホテルのトイレはシャワー式トイレを設置していました。そのシャワー式トイレは日本国内で見かけるモノとは一味違います。電気制御は一切なく、手動ネジによる機械式なのです。ネジをひねると、制御された水の束が噴出されるのです。エネルギーを使用せず、水道の水圧だけを利用してお尻の汚れを洗浄するというものでした。

日本の標準的なシャワー式トイレの仕様をこのような形で現地化した企業の努力に驚きました。

水の洗浄
外国の友人と話していると、日本で素晴らしいのはトイレだ、という話題で盛り上がります。外国の友人は、日本のトイレは清潔で快適だと絶賛します。トイレ以外に褒めるところはないのか、と言いたくなるほどです。
ところが、この日本式のトイレは国際的には、それほど普及していません。水で洗浄するという風習がないのと、水が貴重だからでしょうか。私の記憶では、日本も20年ぐらい前までは水洗浄はありませんでした。近年、日本では一気に普及して、建築物の必需装置になってしまいました。

世界の中で、水洗浄はイスラム圏では一般的です。細いホースが便器とは別に、便器の横の壁に掛けられています。そのホースを壁から外して洗浄するのです。
この使用方法がなかなか難しいのです。日本人だからというわけではありません。イスラム圏の人々も難航していると見えて、多くのトイレの床は水浸しになっています。そのため様々な場所のトイレで、モップを持った人がこまめに水をふき取っています。

仕様の現地化
この水洗浄の習慣があるイスラム圏で、日本のトイレは普及していくと考えていました。しかし、なかなか普及しているようには見えません。
その理由の一つに、日本のトイレの仕様は、高度というか、複雑というか、水準が高すぎるのです。日本のトイレは、個室のドアをあけると、自動的に便器の蓋が開いたり閉まったりするものまであります。蓋が自動的に開くトイレに初めて出会ったときには、ギョッとしたことを覚えています。

その日本の高度過ぎるトイレが、クアラルンプールのホテルでは、シンプルな機械式に形を変えて採用されていたのです。この日本メーカーは仕様をクアラルンプールの状況に合わせて改良したのです。まさに仕様の現地化です。
これこそ、日本の技術が世界で喜ばれる瞬間だと感心しました。工業製品の普及は、その後のメンテナンス・サービス体制を前提としなければなりません。仕様が高度過ぎて複雑な商品は、それに見合ったメンテナンス体制が必要です。日本の水洗浄トイレが、国際的に普及していないのは、仕様が高度過ぎてメンテナンス体制が確立できないという課題があるからでしょう。

このメーカーは、仕様の現地化によって課題を克服したのです。日本の仕様を100とすれば、20程度のレベルに改良し、現地でメンテナンスまで出来るよう徹底的な仕様の現地化を図ったのです。これであれば、世界のどの国の人々でもメンテナンスができます。

困難な仕様の現地化
水の国際協力に関わる中で感じることは、日本の過度に高度な仕様です。例えば、ODAで日本の水処理プラントや機械を途上国に導入したものの、メンテナンスの体制が構築されておらず、数年経つと現地の方々の記憶から消えたように、それらが埃をかぶって放置されているケースがあります。

下図で日本の技術水準の変遷イメージを示しました。
明治近代以降、日本は欧米の技術を取り入れました。そして、江戸時代からあった日本独自の伝統技術に欧米の技術を付加し、改良し、工夫を加え、一気に世界をリードする技術水準に達しました。
もちろん、日本の伝統技術そのものも、欧米の技術に影響され進化していきました。階段上に示されているのが日本の伝統技術の進化です。曲線で示したのが日本の近代技術の総和の変遷です。
今、途上国が必要としているのは、日本の最新式の高度な技術ではなく、使い勝手がよく、メンテナンスもしやすい技術が採用された仕様なのです。この図でいえば、それは1980年代に採用されていた技術なのです。

海外で活躍しているプラントメーカーの友人に「1980年代のプラントの設計図を出しください」と頼んだことがあります。しかし、その返事は「No」でした。その技術者だけではなく、30代、40代の技術者のパソコンの中には、21世紀の最新技術が採用された設計図が入っています。1980年代の設計図は、資料室の埃がかぶった棚に行かなければありません。

日本の水インフラ技術水準の変遷(イメージ)

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メンテナンスからのモノつくり
途上国における仕様の現地化は、昔の先輩たちの技術水準に戻ることです。今の若い技術者たちは、高校から大学までコンピュータを駆使することを学んできました。
50年前の先輩たちは、手作りで装置を進化させてきました。手作りの経験がない今の若い技術者にとって、現地化された技術を用いた手作りのモノつくりは、肉体的にも精神的にもつらい課題なのです。

しかし、もしこれが出来れば間違いなくユーザーや現地企業に喜ばれます。何しろメンテナンスもユーザー自ら、又は現地企業の技術者が出来るのですから。ひいてはそれが市場開拓につながっていきます。

技術を提供する側の一方的な希望を押し付けるのではなく、供給先である現地のニーズ、シーズを上手く融合させ、真に必要とされるものを提供するという、ものづくりの原点を再確認させられました。

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・日本水フォーラムからのお知らせ

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【2月22日】シンポジウム『国連【世界水の日】記念・水未来会議2017』ご案内

日本水フォーラムは、来る2月22日(水)14:00~(開場13:30)、シンポジウム『国連【世界水の日】記念・水未来会議2017』を開催します(於:東京都千代田区永田町)。

国連持続可能な開発目標(SDGs)やパリ協定(気候変動)をはじめとする内外の最新動向を踏まえ、長期かつ広範なビジョンのもと、次世代の水行動に向けた闊達な議論を予定しています。 多数のご参加をお待ちしています。

参加お申込の皆様には、2月17日(金)迄に、当日参加証をEメールにてお送りします。

▼参加お申込方法・概要等の詳細はこちら▼
https://www.waterforum.jp/jp/news/2017/0118/?p=4325
(報告者:マネージャー 桑原清子)

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水の安全保障戦略機構「第15回基本戦略委員会」ご案内

日本水フォーラムが事務局を務める水の安全保障戦略機構は、2月22日(水)10:00~13:00、衆議院議員会館(於:東京都千代田区永田町)にて「第15回基本戦略委員会」を開催いたします。

国連持続可能な開発目標(SDGs)の採択やパリ協定(気候変動)への批准が始まり、水問題に多くの注目が集まる中、委員会では”低炭素で持続可能な水・物質循環社会”に向けた長期かつ広範なビジョンのもと、課題解決に向けた議論を展開する予定です。

多数のご参加をお待ちしています(対象:チーム水・日本関係者、日本水フォーラム団体会員)。

▼参加お申込方法・概要等の詳細はこちら▼
https://www.waterforum.jp/jp/news/2017/0131/?p=4373

※チーム水・日本は国内外の水問題解決に向けた行動チームの募集を広く行っております。
国内外の水問題解決に向けて活動を行っている皆さまのご応募をお待ちしております
▼参加方法の詳細はこちら▼
https://www.waterforum.jp/twj/team/join.html

(報告者:マネージャー 佐藤啓)

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・日本水フォーラムからの報告

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APWF第20回執行審議会を開催しました

日本水フォーラムが事務局を務めるアジア・太平洋水フォーラム(APWF:Asia-Pacific Water Forum)は、シンガポール公益事業庁(PUB)の協力を得て、1月18日に、アジア・太平洋水フォーラム(APWF)第20回執行審議会を開催しました。
執行審議会には、APWFパートナー組織17機関より24名が参加し、第3回アジア・太平洋水サミットのホスト国について、及び、APWFが、2018年3月末に予定されている第8回世界水フォーラムのアジア・太平洋地域プロセスの地域コーディネーターに選出されたことを踏まえ、APWFにおけるテーマ別優先事項、テーマ別リーダーの選出について議論がなされました。

▼詳細はこちら▼
https://www.waterforum.jp/jp/news/2017/0201/?p=4380
(報告者:マネージャー 朝山由美子)

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・活動へのご支援・ご協力のお願いについて

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日本水フォーラムは、皆様の会費及び寄付等によって国内外の水問題解決に向けた
活動を行っております。日本水フォーラムの活動を支援していただける
会員を募集しております。
水問題解決に向けた持続可能な取組みを行うために、皆様の温かいご支援を
なにとぞよろしくお願いいたします。

▼会員募集の詳細はこちら▼
https://www.waterforum.jp/jp/get_involved/pages/become_a_member.php

日本水フォーラムは、国内外の水問題解決に向けて分野問わず幅広い方々と
協働で活動を展開しています。
日本水フォーラムの活動にご協力いただける方、ご興味のある方は
以下よりお問い合わせください。

▼問い合わせ先はこちら▼
TEL: 03-5645-8040
E-mail: news[at]waterforum.jp
※[at]をアットマークに変えて送信してください。

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・掲示板コーナー

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出版物ご案内
『Sanitation and Sustainable Development in Japan』(英文)
発行:アジア開発銀行(ADB)、2016年11月
https://www.adb.org/publications/sanitation-and-sustainable-development-japan

※免責事項:日本水フォーラムは、掲示板の掲載情報に関して責任を負いかねます。
掲載情報へのお問い合わせは各主催者へお願いいたします。

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▼過去のJWF Newsはこちら▼
https://www.waterforum.jp/jp/news/newsletter

※掲示板への掲載希望、JWF News配信停止・変更、その他ご意見・ご要望は、
下記アドレスまで

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JWF News Vol.149    平成29年2月1日発行
特定非営利活動法人日本水フォーラム
〒103-0015 東京都中央区日本橋箱崎町5-4 アライズ第2ビル6階
TEL: 03-5645-8040 FAX: 03-5645-8041
E-mail: news[at]waterforum.jp URL: https://www.waterforum.jp
※[at]をアットマークに変えて送信してください。

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