第4回アジア・太平洋水サミット(APWS)を開催しました!

1. はじめに

 日本水フォーラムが事務局を務めるアジア・太平洋水フォーラム(Asia-Pacific Water Forum=APWF)は、熊本市との共催で、「持続可能な発展の水:実践と継承」というテーマのもと、第4回アジア・太平洋水サミット(Asia-Pacific Water Summit=APWS)を2022年4月23日(土)~24日(日)に開催しました。 

 第4回APWSの開催は、新型コロナウイルス感染症の世界的蔓延等により、当初予定していた2020年10月開催の延期を余儀なくされました。一方、これまでの水の安全保障改善に向けた取組みを見直しつつ、行動を加速化させる必要性がより一層明らかとなりました。 そこで、第4回APWSは、コロナ禍で渡航が困難な中でも、各国の首脳自身が「水」の観点から自国と自身の考え方を自由に述べ、知見を共有し合うことで、水問題の解決には依然としてトップリーダーの強い指導力が不可欠であることを確認、確信を得ていく機会を提供するために、熊本城ホール、及び、オンラインのハイブリッド形式で開催をしました。

 第4回APWSには、天皇皇后両陛下のオンラインによるご臨席を賜りました。また、天皇陛下より、開会式で、おことばを賜るとともに、「人の心と水~信仰の中の水に触れる~」と題した記念講演を賜りました。

 また、開催国代表として、岸田文雄内閣総理大臣には、熊本城ホールで第4回APWSに参加をして頂き、開会挨拶に加え、首脳級会合において、基調演説をして頂くことができました。 他国からは、17名の首脳級、19の大臣級(末尾参照)、28の国際機関の長、在京大使等に第4回APWSに参加をして頂くことができました。そして、第4回APWSに参加をした首脳級の全会一致で、サミットの成果文書である「熊本宣言文書」を採択することができました。さらに、「熊本宣言」の趣旨に沿い首脳級から受けた問いに答えるべく、国内外の専門家や実務者等の協力・協働を得て、9つの分科会、4つの統合セッション、2つの特別セッションを開催し、議論の成果として、議長サマリーを採択することができました。

2. 第4回APWSにおける議論、及び、アウトプット

 第4回APWSは、「持続可能な発展の水:実践と継承」というテーマのもと、 コロナ禍からの復興において、水問題を解決することで、強靭で包摂した持続可能な成長に向けた先進的な解決策を共有し、首脳の政策決定をサポートすること、そして、国内外の関係者のさらなる協調を促し、解決策の展開を加速することを目的に開催しました。

 アジア太平洋地域が新型コロナウィルス感染症からの復興の過程で、水問題および複雑に入り組んだ関連諸問題を解決し、次世代に渡って持続可能な発展を可能にしていくためには、「質の高い成長」を実現していくことが不可欠です。そこで、我々APWF事務局は、国内外の専門家・実務者と協議を重ね、「質の高い成長」とは、健全な水循環を維持または回復しつつ、気候の変化によって激甚化する気象現象と洪水や渇水などの水災害に対する強靭性(Resilience)、安全な水、衛生施設や食料・栄養等へのアクセス、水災害対策、水資源管理などにおける、ジェンダーにとらわれず、貧困層や社会的弱者を含み、誰も取り残されない包摂性(Inclusiveness)、社会活動や環境を保全、維持する持続可能性(Sustainability)のすべてを満足する成長であると定義づけ、第4回APWSの開催を機に、アジア太平洋地域において質の高い成長を実現していくために必要なことをハード・ソフトの両面から促進するための議論の枠組み構築を行ってきました。以下、第4回APWS各プログラムの開催結果を共有します。

(1)開会式

 第4回APWSの開会式では、APWFの会長、兼、第4回APWSの議長である森喜朗元首相が開会挨拶を述べ、 国や地域の繁栄の礎は、水で、水の恵沢と脅威をともに受け止め、分かち合う、人間の叡智が求められていること、そして、環境、経済、社会的なつながりの中で、人間の安全保障を実現するには、水問題の解決が不可欠であることを強調しました。

 天皇陛下からは、「今回のサミットにおいて、各国首脳が多様な水問題を解決するための構想や思考を共有し、更には、国際機関、政府機関、NGO、各分野の専門家など様々な人々が集い議論し、叡智を結集して具体的な解決策を探り、アジア太平洋地域、更には世界の水問題の解決、そして、水を通じた全世界の人々の幸福と世界の平和に向けた大きな一歩となることを心から願う。」というお言葉を賜りました。

 岸田文雄首相は、開会挨拶で、「水を治めるものは国を治める。水を治めることは地球規模の社会課題を解決することに大きく貢献する。」ことを述べ、強靭で包摂的、持続可能な開発を促進するために、政治リーダーが水問題を牽引する責務、行動を加速させていく使命があることを強調しました。

 アントニオ・グテーレス国連事務総長は、第4回APWSに対してビデオメッセージを下さり、世界は持続可能な開発目標(SDGs)の達成には程遠く、水資源管理を改善し、強靭性を高め、行動を加速させるためのより良い協力を促進していくための資金動員を優先させなければならないことを強調しました。

 第4回APWS主催者を代表し、 APWFからは、マーク・パスコ―新議長が、「APWFからの報告」として、APWFの概要、これまでのAPWSの成果、第4回APWS及びその成果の発信に対する意気込みを述べました。熊本市の大西市長は、熊本市の地下水保全の取り組みを共有し、その活動は国連”生命の水(Water for Life)”最優秀賞を受賞するなど、世界的にも高い評価を頂いていることについて共有しました。また、第4回APWSの共催を通じて、2016年4月に発生した熊本地震から復興した力強い姿と国内外の皆様からの支援に対する感謝のメッセージを伝えたいと発信しました。 

 そして、サミットの主催地を代表し、熊本北高校の生徒2人がサミット開始を英語で宣言しました。

 開会式において、天皇陛下からの「人の心と水~信仰の中の水に触れる~」と題した記念講演は、次の資料をご参照ください。

 第4回アジア・太平洋水サミット 開会式 記念講演全文(宮内庁ホームページ)
 第4回アジア・太平洋水サミット 開会式 記念講演資料(宮内庁ホームページ)

(2)首脳級会合・「熊本宣言文書」の採択、ハイレベルステートメントセグメント

 4月23日午後に開催した、第4回APWSの首脳級会合では、第4回APWSの成果文書である「熊本宣言文書」の最終議論を行い、第4回APWSに参加をした首脳級の全会一致で採択されました。「熊本宣言文書」は、コロナ禍からの回復において、強靭性、持続可能性、包摂性を兼ね備えた質の高い社会への変革が必要であり、取組みの加速に向けて、「ガバナンスを整える」、「資金ギャップを埋める」、「科学技術へ要望する」ことを宣言した文書です。 「熊本宣言」文書の採択にあたっては、第4回APWSの対象国すべてに、外交ルートを通じてドラフト文書を共有し、コメントや修正案を求めたほか、第4回APWSに参加をすることになっていた各国とオンラインで準備会合も開催し、アジア太平洋地域の各国が宣言文書ドラフトを確認し、修正案等を共有することで、オーナーシップを持つことができる宣言文書に仕上げることができたことも第4回APWSの重要な成果です。 

 熊本宣言文書英語原文:
 https://www.waterforum.jp/pdf/other/KumamotoDeclaration.pdf

 熊本宣言文書日本語仮訳:
 https://www.waterforum.jp/pdf/other/KumamotoDeclaration_jp.pdf

 また、首脳級会合において、岸田文雄首相が基調演説を行い、「熊本水イニシアティブ」を立ち上げて下さりました。 岸田首相は、水問題の解決策の一つとして、我が国は、アジア太平洋地域における水を巡る社会課題に対し、気候変動適応策・緩和策両面での取組の推進、及び、基礎的生活環境の改善等に向けた取組の推進の2項目を柱に、官民協働により、デジタル化やイノベーションを活用して我が国の先進技術を活用した「質の高いインフラ」整備等を通じて、アジア太平洋地域の質の高い成長に積極的に貢献すること、そして、その実現に向けて、今後5年間で5000億円の支援を行っていくことを表明して下さりました。

 第4回APWSに参加をした首脳級は、岸田首相により発表された「熊本水イニシアティブ」を評価し、支持しました。 続いて、17の各国首脳級も、各国の水課題に関する状況や、「質の高い成長」、及び、水関連SDGsの達成に向けた取組みを共有し、コロナ禍からの復興において、さまざまな水問題を解決するためのリーダーのイニシアティブを発信しました。 首脳級会合に続いて、アジア太平洋地域の16の大臣級が「質の高い成長」の実現に向けたステートメントを述べました。さらに、28の国際機関の長やアジア太平洋地域の在京大使等も、同テーマで、ステートメントを述べて頂きました。

(3)9つの分科会、2つの特別セッション4つの統合セッション、の開催、及び、第4回APWS議長サマリーの採択

 第4回APWSに参加をした首脳級は、上記首脳級会合において、第4回APWSに参加をしたリーダー、専門家、科学者、そして、すべての関係者に、「熊本宣言文書」の趣旨を踏まえて、「水関連分野において、ガバナンス、ファイナンス、科学技術の 3 つの分野で変革と改善を行うための障壁、突破口、機会、推進方法を特定し、徹底的に議論してほしい。特に、科学技術については、リーダーの分野横断的な意思決定において、どのような役割を果たすべきか答えを導いてほしい」という問いを投げかけました。この問いに基づき、首脳級会合後のサミット1日目の午後、及び、2日目の午前に、9つの分科会を開催しました。各分科会では、水関連SDGsを達成し「質の高い成長」を確保するための配慮事項を明らかにし、それを下支えする「質の高いインフラ」をハードおよびソフト両面から着実に整備していくために必要な行動について、ガバナンス、ファイナンス、科学技術の観点から議論を行い、政策提言が発信されたほか、アジア太平洋地域の先進事例を共有しつつ、各国の状況に応じた課題解決へのアプローチが提示されました。 各分科会で紹介された先進事例の一部、及び、分科会では時間の都合上紹介することができなかった先進事例は、第4回APWSショーケース・ロードマップ集においてもご参照頂けます。
https://www.waterforum.jp/pdf/other/4APWS_Showcases_Roadmaps.pdf

 また、特別セッションとして、アジア・太平洋地域の「質の高い成長」実現に向けて、都市から国スケールの事例と教訓を発信した「ショーケースセッション」、及び、アジア太平洋地域の島しょ国が抱える課題に注力した「島しょ国セッション」が開催されました。

 サミット2日目の午後には、科学技術、ガバナンス、ファイナンスの観点から、9つの分科会からのメッセージと提言を包括的にとりまとめ、首脳級からの問いに答えた統合セッションが開催され、具体的な行動提案が提示されました。(分科会、特別セッション、統合セッションの概要について、プログラムブックセッション概要を参照ください。
https://apwf.org/apwf_wp/wp-content/uploads/2022/04/4APWS_ProgramBook_jp.pdf

 さらに、3つの統合セッションの総括統合セッション「水を通じてより良いポストコロナ世界を導くー熊本から世界へ、未来へ-」が開催されました。この総括統合セッションでは、3つの統合セッションからのメッセージと提言が各主催機関の代表から共有されました。さらに、アジア・太平洋水サミット前後に開催されるボン会議、第9回世界水フォーラム、2022ドゥシャンベプロセスにおける議論と成果と協調しながら、第4回APWSの成果を、2023年「国連水の行動10年中間レビュー会議」に持ち込んでいくために何をすべきかの議論が行われました。本総括統合セッションの成果は、9つのテーマ別分科会と3つの統合セッションを統括する成果として、議長サマリーの主要な基盤となりました。

 閉会式では、総括統合セッションの共同議長を務めた、水と災害ハイレベルパネル(HELP)議長のハン・スンス韓国元首相、及び、上川陽子衆議院議員・水制度改革議員連盟会長が総括統合セッションにおける議論のサマリーを発信しました。このサマリーを踏まえ、森APWF会長の代理で、マーク・パスコ―APWF議長が、議長サマリーの前文を読み上げ、第4回APWSの議長サマリーが採択されました。

 「第4回APWS議長サマリー」は、第4回APWSに参加した首脳級からの上記問いの回答として、「持続可能な社会」、「強靭な社会」、「包摂的な社会」の実現に向けて、ガバナンス、科学技術、ファイナンスの観点から、アジア太平洋地域の質の高い成長に向けた明確な道筋と実践的な行動を示しています。 さらに、第4回APWSにおいて、分科会に加え、分野横断的に議論され、かつ、熊本水イニシアティブにおいても主要な柱の一つとなっている「水と気候変動、災害リスク低減」に関する提言が、国連2023年水会議、及び、水に関連する課題に対処する他の国際プロセスにおいても、取り組むべき優先行動として位置付けられ、アジア太平洋地域、及び、世界各国・国際社会が課題解決にむけてより一層コミットメントすべきであることを提言しています。 第4回APWSで提示された提言やアクションは、サミットの成果として捉えるだけでなく、各々が、実際に行動していかなければならないことであり、あらゆる利害関係者が、様々な水課題の解決やアジア太平洋地域、及び、世界の質の高い社会の構築に向けて、着実にかつ断固たる行動を前進させていく必要があることを強調しています。

 第4回APWS議長サマリー全文:
 https://www.waterforum.jp/pdf/other/4APWS-chair-summary-fl.pdf

3.おわりに

 第4回APWSの開催にあたっては、人材も資源も限られた日本水フォーラムの体制下で、コロナウィルス感染症の国内外の感染者数の動向に関する不確実要素も見据えながら、「サミット」として資する開催準備を行うことに苦慮しつつも、熊本市、及び、日本政府の協力を得て、多様な関係者と一丸となって、熊本城ホール、及び、オンラインで開催をする準備を行ってきました。 第4回APWSの開催に向けて、日本水フォーラムに協力をして下さった皆様方に心から感謝を申し上げます。

 さらに、2006年のAPWFの設立時から第4回APWSの終了時まで、APWF執行審議会の議長として、APWSを含む、日本水フォーラムのAPWF活動に対して様々な有益な助言とともに貢献をしてくださった元ウォーター・エイドCEOのラビ・ナラヤナンさんにも謝辞を申し上げます。 ラビ・ナラヤランさんは健康上の都合によりAPWF執行審議会議長を退任され、新議長は、オーストラリア・グリフィス大学/国際水センターCEOのマーク・パスコ―さんが務めることになり、閉会式の際にAPWF議長交代式を行いました。

 この第4回APWSの開催準備の過程、第4回APWSは、SDGsの目標6「すべての人々の水と衛生の利用可能性と持続可能な管理を確保する」に関する集中行動期間として設定された「国連水の国際行動の10年」の中間レビューに向けたマイルストーンの一つとして、国連決議の中に位置付けることができました。中間レビューは2023年3月に国連本部で46年ぶりに水に注力して開催される「国連水会議」です。日本水フォーラムは、アジア太平洋地域のSDGsの達成、及び、「質の高い成長」に向けて、アジア太平洋地域の英知と提言をとりまとめた「熊本宣言文書」、「第4回APWS議長サマリー」、及び、その参考文書である「質の高い成長の実現に寄与するショーケースとロードマップ集」を国際社会に発信し、アジア太平洋地域および世界の水課題の解決に寄与していくための取組みを、国内外の政策決定者、専門家、実務者等と協働しながら継続的に行っていきます。

  さらに、第4回APWSの閉会式において、アジア太平洋地域のユース代表と、九州から福岡の高校生の代表から発信された「ユースからのメッセージ」( https://www.waterforum.jp/pdf/pr/4th-APWS-Youth-message-to-the-closing-ceremony-final.pdf )にあるように、水問題の解決に向けて、ユースが意義ある参画を行い、国内外の様々な利害関係者と協働で意思決定を行い、行動を行っていくための取り組みを実施していく次第です。

1 分科会「ユースによるリーダーシップ・イノベーション」の様子
2 総括統合セッションにおける議論の様子

(報告者:マネージャー 朝山由美子)

アジア・太平洋水サミット首脳級・大臣級参加国

首脳級: 

カンボジア、ツバル、ラオス、ウズベキスタン、日本(熊本での参加)、

ブータン、ベトナム(オンライン・リアルタイム参加)、

インドネシア、キルギス、スリランカ、タイ、タジキスタン、トルクメニスタン、ナウル、ニウエ、フィリピン、バングラデシュ、マーシャル諸島(ビデオメッセージ)

大臣級: 

ブルネイ、インド、インドネシア、ラオス、ニウエ、モルディブ、フィリピン、カンボジア、ウズベキスタン、タジキスタン、日本(熊本での参加)、

キルギス、シンガポール、パラオ、フィジー、アルメニア(オンライン・リアルタイム参加)

アゼルバイジャン、韓国、ソロモン諸島、ネパール、モンゴル(ビデオメッセージ)

日本水道新聞社による第4回アジア・太平洋水サミット速報無料公開ページ
https://suido-gesuido.co.jp/apws4/

及び、

アースネゴシエーションブレティン/ENBによるサミットハイライトもご参照ください。(英語)
4月23日デイリーハイライト
https://enb.iisd.org/4th-asia-pacific-water-summit-23April2022
4月24日デイリーハイライト
https://enb.iisd.org/4th-asia-pacific-water-summit-24April2022
サマリー
https://enb.iisd.org/sites/default/files/2022-04/4th_asia_pacific_water_summit_0.pdf

熊本水イニシアティブ
概要 https://www.mlit.go.jp/mizukokudo/mizsei/content/001479357.pdf
本文 https://www.mlit.go.jp/mizukokudo/mizsei/content/001479359.pdf
参考資料 https://www.mlit.go.jp/mizukokudo/mizsei/content/001479360.pdf
補足資料 https://www.mlit.go.jp/mizukokudo/mizsei/content/001479362.pdf

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