ストックホルム世界水週間2021オンライン(8月23-27日)アジアフォーカス・ガバナンスセッションの開催

水の危機はガバナンスの危機でもあるため、効果的な水ガバナンスに取り組むことは、アジア太平洋地域における最優先事項の一つです。ストックホルム世界水週間2021オンライン3日目に開催した本セッションでは、アジア太平洋地域の水ガバナンス分野に携わる主要アクターがスピーカーとして集まり、3部構成のセッションを開催しました。

Asia Focus: Accelerating inclusive water governance to advance sustainable development
(アジアフォーカス:持続可能な発展の深化に向けた包摂的水ガバナンスの加速化)

セッション開催結果概要
 第1部では、あらゆる視点から、アジア太平洋地域の水ガバナンスの現況及び水ガバナンス課題を検証し、持続可能で包摂的な開発を促進するために必要な水ガバナンスの構築に向けた提言を発信しました。アジア開発銀行(ADB)が、アジア水開発展望(AWDO)2020の分析結果を、経済開発協力機構(OECD)が、アジア太平洋地域の水ガバナンスの分析結果を紹介しました。ウォーターインテグリティネットワーク(WIN)は、世界とアジア太平洋地域の水インテグリティ分析結果を紹介しました。GWPは、アジア太平洋地域におけるSDG6.5.1(IWRM)の2020年進捗評価分析結果を共有しました。

 第2部では、アジア太平洋地域において、国や地方レベルで水の安全保障を強化し、2030年までに、水関連SDG目標を達成していくために必要で重要となる水ガバナンスの教訓や革新的なアプローチを具体事例を紹介しながら議論を行いました。各パネリストは、まず3分間のビデオプレゼンテーションを通じて、各々が取り組んでいる水ガバナンスプログラムの先進事例を紹介しました。その後、ライブで、パネルディスカッションを展開し、2030年のSDGs達成に向けて、水ガバナンスの実施に関するグッドプラクティスをどのように実装をしていくか、教訓、課題、展望について議論しました。

 第2部において、日本の機関からは、国際協力機構(JICA)の災害管理と水資源管理に関する専門家の石渡幹夫氏が、歴史と経験から得られた水ガバナンスに関する日本の教訓を紹介しました。また、水災害・リスクマネジメントセンター(ICHARM)の池田鉄哉特別研究監は、協働的プラットフォームを通じた組織レベルでのガバナンスの向上と専門研修を通じた個人レベルでの能力向上の重要性を強調しました。

 さらに、IUCNアジアのRaphael Glemet 氏(ビデオプレゼンテーション)及びVishwa Ranjan Sinha氏(パネルディスカッション)が、水リスクに対処するための自然を基盤とした解決策の適用、OECDのOriana Romano氏が、水関連政策のモニタリング、水利用者間のトレードオフを管理するための水政策手段、整合性と透明性の実践、組織の分断と政策のサイロ化の課題に取り組むための事例等を紹介しました。

 第3部では、GWP東南アジアリージョナルコーディネータ―のFany Wedahuditama氏が、水ガバナンス分野に携わる多様な機関間の具体的な共同行動に向けたコミットメント(多様な利害関係者間の協働による水の安全保障に関するオープンプログラム)に着手することを発表し、アジア太平洋地域の水ガバナンスの向上に携わっている機関に対して、参加を呼びかけました。

 アジアフォーカス・ガバナンスセッションの総括として、次の主要アクション提案を行いました。

アジアフォーカス水ガバナンスセッションからの主要アクション提案

Action #1- Governance and monitoring of policies (which include data)
(ガバナンスと政策のモニタリング(データも含む))

  • 安全な飲料水と衛生設備へのアクセスを向上させ、水関連災害からの強靭力を高め、水の安全保障を促進するために、OECD水ガバナンス原則で提唱されているように、水に関する政策や制度において、誠実さと透明性の実践を主流にして、優れた水ガバナンスを強化する。
  • 統合された長期的なマルチステークホルダー・プロセスを通じて、OECD水ガバナンス指標フレームワークを通じた水ガバナンス条件の実施レベルとSDG6の実施及び2030アジェンダ、パリ協定、2020年以降の生物多様性の枠組みの目標達成に向けた取り組みに関するデータ収集と評価を促進する。

Action #2- Finance and investment (資金と投資):
現在および将来の水インフラへの投資が気候変動に対して強靭であることを確認し、アジア太平洋地域における水の強靭性、持続可能性、包摂性を高めるために、既存および新規のグレーインフラに自然を基盤とした解決策の導入を円滑に進めるとともに、他の開発目標の達成にも貢献する。

Action #3- Capacity building through collaboration platforms and multi-stakeholder processes
(協働プラットフォームや多様な利害関係者とのプロセスを通じたキャパシティビルディング)

  • アジア太平洋地域の水関連機関を対象とした「水の安全保障オープンプログラム」を実施することで、水の安全保障の推進に向けた様々なマルチステークホルダーやセクターの貢献度をマッピングすることが可能となり、政府、ドナー、市民社会の取り組みの整合性を図ることができるようにする。
  • 循環型社会など、都市の水に対する強靭性を高めるための革新的なガバナンス・ソリューションを見つけるために、都市間の学習や政府レベルを超えた対話を強化する。
  • アジアの越境河川や共有河川の流域管理において、国際水法(IWL)の原則の採択と適用を促進する。
  • 国際洪水イニシアチブ(IFI)を通じて、すべての政府レベルおよび水関連機関の専門家を育成する。


プログラム

開会の辞
APWF事務局/日本水フォーラムマネージャー 朝山由美子

セッション1: Position and status of water governance for Asia Pacific countries to address issues on regional water governance

  • Asian Water Development Outlook (AWDO) 2020:  Ms. Neeta Pokhrel, Chief of Water Sector Group, Sustainable Development and Climate Change (SDCC) Department, Asian Development Bank (ADB) 
  •  Asia Focus Water Governance, lesson learned from the AWDO 2020:  Dr. Maria Salvetti, Water Policy Analyst, OECD
  •  Water Integrity Global Outlook 2021: Ms. Barbara Schreiner, Executive Director, Water Integrity Network 
  •  Implementation Status of SDG 6.5.1 Integrated Water Resources Management in Asia Region 2020: Mr. Colin Herron, Global Coordinator, Water Solutions for the SDGs, Global Water Partnership (GWP) 

セッション2: Learning exchange sharing and discussion on concrete case studies in water governance (3分間のビデオプレゼンテーション)

  • Water governance for Blue Cities: Dr. Oriana Romano, Head of Unit, Water Governance and Circular Economy, Cities, Urban Policies, and Sustainable Development Division, Centre for Entrepreneurship, SMEs, Regions and Cities, OECD 
  • Role of International Water Law and informal mechanisms in transboundary water cooperation: Mr. Raphael Glemet, Senior Programme Officer, Science and Strategy Group, IUCN Asia
  • Japanese lessons about water governance throughout history: Dr. Mikio Ishiwatari, Japan International Cooperation Agency (JICA)
    国際協力機構(JICA)災害管理と水資源管理に関する専門家 石渡幹夫
  •  Innovation of capacity building on water-related disaster risk reduction:   Dr. Tetsuya Ikeda, Deputy Director (International Coordination), International Centre for Water Hazard and Risk Management (ICHARM) 
    水災害・リスクマネジメントセンター(ICHARM)特別研究監 池田鉄哉

全体パネルディスカッション (ライブ)
モデレーター:
世界水パートナーシップ シニアネットワーク&越境水協力専門家 安田由美子
パネリスト:

  • Mr. Vishwa Ranjan Sinha, Programme Officer, Science and Strategy Group, IUCN Asia
  • Dr. Tetsuya Ikeda, ICHARM
  • Dr. Mikio Ishiwatari, JICA
  • Dr. Oriana Romano, OECD

セッション3: Joint actions and solutions for water governance to accelerate the achievement of the SDGs through enhanced water governance
プレゼンテーション 
“Breaking down the silos: a multi-stakeholder open program for enhanced water security”?
Mr. Fany Wedahuditama, Regional Coordinator, GWP Southeast Asia
聴講者からの質疑応答

閉会の辞: 本セッションのサマリー及び主要アクションの提案
APWF事務局/日本水フォーラムマネージャー 朝山由美子

(報告者:マネージャー 朝山由美子)

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