第5回及び第6回APWFウェビナー開催結果概要

概要

第5回及び第6回APWFウェビナーは、アジア開発銀行及び経済協力開発機構(OECD)による、アジア水開発展望2020(以下、AWDO2020という)について、特に、ファイナンスとガバナンスの観点から、概要とその提言について情報提供いただきました。

AWDO2020は、アジア開発銀行(ADB)とアジア太平洋水フォーラム(APWF)が、アジア太平洋地域49か国(ADBメンバー)の水の安全保障に関する現状をまとめた報告書です。2020年12月18日に公表しました。  5つの観点、「1:農村部における水の安全保障」、「2:経済のための水の安全保障」、「3:都市における水の安全保障」、「4:環境の観点から見た水の安全保障」、「5:水関連災害の観点から見た水の安全保障」から、対象各国の水の安全保障に関する包摂的な分析を行い、併せて、「手頃な価格で提供される安全な水の普及」、「全ての人々のための公衆衛生環境の改善」、「水に起因する疾病や洪水による被害を軽減させる取り組み」など、代表的な事例を紹介しています。

第5回APWFウェビナーの概要

日時:12月22日(火)15時~16時(日本時間)

トピック:アジア・水開発展望(AWDO)2020、及び、アジア・太平洋地域の水分野へのファイナンス

スピーカー:

  • トーマス パネラ アジア開発銀行(ADB)水セクターグループ長
  • シャビエル ルフレーブ 経済協力開発機構(OECD)環境局・ レジリエンス・適応・水チームリーダー

第5回APWFウェビナーでは、AWDO2020のファイナンスに関する部分を、経済協力開発機構(OECD)によりまとめられた「アジア・太平洋地域の持続可能な成長のための水の安全保障へのファイナンス」を示しつつ、水供給と衛生、洪水防止、灌漑インフラなどのアジア・太平洋地域におけるファイナンスフロー、ファイナンスニーズ、ファイナンスキャパシティの定量分析評価を行った結果を紹介しました。

アジア・太平洋地域の各国の状況について

  • 2015-2030年の間に、安全に管理された水供給と衛生サービスへの普遍的アクセスに対して、資本、維持管理コストを含め、各年に、合計1980億ドル(ほとんどの国で、GDPの1-2%分に相当)の投資が必要
  • 水インフラの投資におけるODAの割合は低くADBメンバー国でも、特に支援が必要な分野に重点的な支援がなされておらず、水供給と衛生に対するサービス代金についても十分な活用がなされていないこと
    等を指摘しました。

また、水分野へのファイナンス関する提言として、更なる公的資金が必要ということだけではなく、次の取り組みも合わせて行っていくことが必要であると強調しました。

  • 利用可能な資本と資金源を最大限活用し、サービスプロバイダーの維持管理を効率よくしていくこと
  • 水分野と他の政策の一貫性を促進し、水需要管理と水資源配分の強化等を行い、将来への負債の蓄積を避けること
  • 現実的な財務戦略のある計画づくりを行うこと、
  • 追加資金源として、民間投資を呼び込むために、開発金融と公的資金を活用する。
  • 水の汚染者及び受益者からの新たな資金源を検討する

ガバナンスに関しては、効率性、効果・信頼という3つの要素が重要であり、これらは安定した資金確保に寄与することにもつながること、水政策や投資に関する意思決定における信頼性向上は、多様な利害関係者の水の安全保障の改善に向けた貢献促進にもつながると指摘しました。

発表資料・動画:
http://apwf.org/5th-apwf-webinar-awdo-2020-and-financing-water-security-and-the-sdgs-in-asia-and-the-pacific/


第6回APWFウェビナーの概要

日時:1月21日(木)17時~18時(日本時間)

トピック: アジア太平洋地域の水ガバナンス:アジア開発展望(AWDO)2020からの教訓

スピーカー

  • トーマス パネラ アジア開発銀行(ADB) 水セクターチーフ
  • マリア サルベッティ 経済協力開発機構 (OECD) 水政策分析官

アジア・太平洋地域各国の水の安全保障を改善していくためには、政府機関すべてのレベルにで、多様な利害関係者と様々な調整を行いつつ、公共政策を策定・実施していくこと求められます。第6回APWFウェビナーでは、AWDO2020の一環で実施した、アジア・太平洋地域48か国に対する、「OECDの水ガバナンスに関する12の指標」による水ガバナンスの実態調査の結果及びそれに基づいた政策提言を発信しました。

AWDO2020の水の安全保障に関する5つの観点ごとに、各国はどういった取り組みをしているか、どのような手法を用いているか、水の安全保障に関するスコアが高い国はどういった工夫をしているかといった点を説明しました。また、能力開発への対応に関して、国政府だけでなく、関係する自治体や他の利害関係者が一堂に集まった水政策対話を行い、それぞれの役割や責務を明確にしながら能力開発を進めていくことの必要性について言及しました。 人権の観点からは、水と衛生へのアクセスを改善していく際にも、誰が何を行うか、誰が何に対して支払いをするか、なぜ、どうやって、という視点を明確にしながら、課題に対処していくことの重要性について強調しました。


表1:OECD(2015)水ガバナンスに関する12指標

OECDのサルベッティ氏から、分析結果を踏まえたアジア・太平洋地域の水カバナンス改善のために、次の6つの提言が説明されました。

  1. 水関連政策の実施やモニタリングを強化する
    水政策が意図した結果につながるよう、モニタリングや評価に関する能力を高め、制度設計の改善に向けて努力をする。

  2. トレードオフを管理する水分野の政策手段を導入し、随時情報更新する
    水問題解決に向けた取り組みのリスクやコストに関するエビデンスベースでの公開討論を促進するとともに、誰が何に対して支払いをするかなどの意識啓発や合意形成を行い、現在及び将来の水の適正価格設定や持続可能性に関する適正な意思決定過程を導く。

  3. 水資源を管理し、持続可能な結果を見出すために、水分野の経済的手段を導入する
    – 都市の水の安全保障に関するスコアが高い国で実施している地下水取水の適正化
    – 水の安全保障のリスク低減につながる使用者・汚染者支払い原則等の経済的手段の導入

  4. データ・能力のギャップに取り組む
    適切な水政策を策定・実施していくための、水・衛生サービスや水資源管理、水関連災害に関する情報や事後評価の不足を解消するため、水に関するデータを観測、収集、分析、解析するだけでなく、プロジェクト管理や予算管理等、運営に関することも含む能力や資源を確保するとともに、あらゆる政府レベル及び水関連機関が、専門家の育成に取り組む。

  5. 水に関する意思決定過程に利害関係者がさらに関与する機会を構築する
    – 水資源管理やサービスの提供に関して、利害関係者マッピングを実施し、多様な利害関係者が意思決定過程プロセスに関与していく道筋を見出す。
    – 流域管理機関や流域管理機関ネットワークの対話プラットフォームを構築する、等。

  6. 誠実性と透明性の促進に関することを水政策、制度・ガバナンスの枠組みに取り入れる
    – 意思決定者や利害関係者に対して、水関連課題の情報や投資に対する権利に対して説明責任を持ち、独立した機関として法律が施行できるよう、法的、制度的枠組みを促進する。
    – 組織の誠実性(インテグリティ)促進のための実践やツールを活用し、意識改善に努める。

発表資料・動画:
http://apwf.org/6th-apwf-webinar-water-governance-in-asia-pacific-lessons-learnt-from-the-awdo-2020/

(報告者:マネージャー 朝山由美子)

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