アジア水開発展望2020年版の発表

アジア開発銀行(ADB)と、日本水フォーラムが事務局を務めるアジア・太平洋水フォーラム(APWF)は、2020年12月18日(金)に「アジア水開発展望(AWDO)2020年版」を発表しました。AWDOは、アジア太平洋地域の水の安全保障の状況の詳細を分析し、地域が直面している重要な水課題をまとめた報告書です。これまでに、第1版(2007年)第2版(2013年)第3版(2016年)が発行されています。

AWDO2020年版ハイライト

深刻な水問題による制約
 2020年版のアジア水開発展望(AWDO)でも述べられているように、世界人口の実に6割を占めるアジア太平洋地域では、経済やその他分野での発展にも関わらず、未だ3億人もの人々が、安全に管理された、あるいは、基本的な水サービス(飲料水等)を享受できておらず、12億人が適切な衛生施設を利用できていないという状況にある。
 水と衛生施設へのアクセスの悪さは、外部からの経済的ショックや新型コロナなどの感染症の影響を特に受けやすい脆弱な人々に、より多くの影響を与えている。

 アジア太平洋地域のADB加盟国49カ国のうち、27カ国の経済発展が、深刻な水問題により制約を受けており、また、18カ国が水に関する災害から住民を未だ十分に守ることができていない。
 アジア太平洋地域は、世界で、災害の被害を最も受けてきた地域であり、災害件数の40%以上、被災者の84%以上を占めている。沿岸の大都市は、気候変動のリスクや災害(洪水、海面上昇、干ばつ)に対してますます脆弱化しており、生命や生計、そして健康が脅威に晒されると共に、莫大な経済的損失が発生している。
 「過去数十年にわたり、アジア太平洋地域は、目覚ましい経済成長を遂げ、水の安全保障が具体的に向上することで社会福祉を向上させてきた」とAWDOの2020年版を作成したADBの水セクター部門チーフのトム・パネラ氏は述べている。

 特にこのコロナ禍において、アジア太平洋地域の包摂的な経済成長と全体的な社会福祉の底上げを支援していくために、統合水資源管理、優れたガバナンス、そして人材育成が不可欠であることには変わりがない。

各国の水の安全保障の測定
 AWDO2020で定義される水の安全保障とは、安全で、手頃な価格、公平で、包摂的な水供給と衛生施設(トイレ)の利用、持続可能な生計、健全な生態系、水関連リスクの管理を実現するために必要な、十分な量と質の水を確保できる状態を言う。
 水の安全保障を実現することにより、アジア太平洋地域の農村部と都市の経済の回復力を高めることができるだろう。AWDOは、5つの側面(KD)から、水の安全保障を測定している。5つのKDとは、すなわち、「農村家庭の水の安全保障」、「経済的な水の安全保障」、「都市の水の安全保障」、「環境的な水の安全保障」、「水関連災害に関する安全保障」である。
 水の安全保障は、様々な指標に関する公的に入手可能なデータに基づき、KDごとに算出されたスコアで表される。5 つの KD のスコアをすべて足し合わせて、各国の多面的な水の安全保障スコアが形成されている。このスコアをもとに、各国の水の安全保障の段階が、「初期段階」から順に、「取組段階」、「実現段階」、「効果的段階」、「モデル段階」の5段階で表されている。

国家の水安全保障
 ADB加盟国のうち、「初期段階」と「取組段階」にある国の数は、30カ国から22カ国へと次第に減少した一方、「実現段階」と「効果的段階」にある国の数は19カ国から27カ国に増加した。これは、この地域での全体的な状況の改善を反映している。

KD1:農村家庭の水の安全保障
 すべての地域で、農村家庭の水の安全保障の改善は着実に進んでいる。東アジア地域と東南アジア地域の状況は良好だが、太平洋地域と南アジア地域は、遅れをとっている。 ADB加盟国23カ国が依然として「初期段階」及び「取組段階」にある(2013年版では、その数は28カ国であった)。一方、「効果的段階」と「モデル段階」にある加盟国の数は、7カ国から13カ国に増えている。

KD2:経済的な水の安全保障
 ADB加盟国8カ国が依然として「初期段階」にある太平洋地域を除き、他のすべての地域では順調な進捗を示している。だが、ADB加盟国32カ国が未だ「初期段階」及び「取組段階」であり、不十分な水管理により、21億人の経済活動が深刻な制限を受けている。

KD3:都市の水の安全保障
 2013年版と2020年版において、都市の水の安全保障はほぼ同じレベルに保たれている。東アジア地域の都市部の水の安全保障は、先進国とほぼ同じレベルに達している一方、太平洋地域では遅れている。ADB加盟国のうち7カ国は依然として「初期段階」にあり、18カ国は「取組段階」にある。

KD4:環境的な水の安全保障
 KD4では様々な状況が混在している。ADB加盟国のうち、「実現段階」と「効果的段階」にある国の数は、2013年版では20カ国であったが、2020年版では31カ国に増加している。一方、ADB加盟国18カ国では、依然として「初期段階」及び「取組段階」にある。東南アジア地域のスコアは高く、先進国とほぼ同レベルであり、太平洋地域のスコアは平均を上回っている。一方、南アジア地域は他の地域に後れを取っている。

KD5:水関連災害に関する安全保障
 過去10年間に何度かの大規模な干ばつを経験し、それによってスコアが悪化した南アジア地域を除くと、すべての地域で順調な進捗が見られる。2020年版では、ADB加盟国18カ国が未だ「初期段階」及び「取組段階」にあるが、2013年版の20カ国からはわずかに減少している。

 水の安全保障を達成するための資金調達の必要性は計り知れない。ADBは、水と衛生への投資ニーズは2030年までに年間平均530億ドルとなり、そのうち約3分の1は、民間セクターからの拠出が必要になると推定している。
 優れたガバナンスは、地域の水の安全保障を促進し、現実に持続可能な影響を与える、すなわち、「誰一人取り残さない」を実現するために、必要不可欠である。AWDOでは、「すべてのアジア太平洋地域のADB加盟国が水の安全保障を達成するには、政府のあらゆるレベルにおける強力な公共政策、関係当局間の明確な責務配分、定期的なモニタリングと評価メカニズムが必要である。」と結論付けられている。また「同時に、必要とされる制度的及び技術的介入を実施するためには適切な財政的手段を利用できるようにするべきであり、こういった介入には、利用可能な水資源、水関連の資産及び財源を最大限に活用するための適切な環境が必要である。」とも述べられている。

(翻訳源:アジア開発銀行:https://www.adb.org/news/features/asia-s-water-security-glass-still-half-full

このコンテンツは、公益財団法人 河川財団の河川基金の助成を受けています。

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