2025年9月9-10日に、オーストラリア・ブリスベンで開催された「第26回国際河川シンポジウム(International River Symposium, IRS)」に参加しました。
国際河川シンポジウムは、オーストラリア国際河川財団が主催する国際会議で、河川管理者、政策立案者、科学者、NGO、企業、先住民団体など多様な関係者が集い、河川の環境的・社会的・経済的価値を共有しながら、流域管理の最良の実践を議論します。知識交流と協力を通じて、世界の河川の持続可能な管理とレジリエンス向上に向けた実践的行動を促進する場です。
第26回のテーマは「River Revolution: Accelerating Solutions for Climate Resilience(河川革命:気候レジリエンスに向けた解決策の加速)」。会期中は、1日間のマスタークラス、2日間の本会議、さらにティース国際リバープライズ(Thiess International River Prize)授賞式を含むイブニングイベントなど、多彩でインタラクティブなプログラムが展開されました。
- 日本の2024改訂水循環基本計画によるIWRMの推進
筆者は本シンポジウムで「日本の2024改訂水循環基本計画によるIWRMの推進」を発表しました。発表では、戦後の国土開発から地域主体の流域総合水管理へと進化してきた日本の水政策の歩みを振り返り、気候変動や老朽化インフラ、人口変動などの課題に対応する日本の統合的水資源管理(IWRM)の最新の取り組みを紹介。全国84流域での計画策定、官民・地域の協働、データ駆動型管理、レジリエントな水管理、2050年カーボンニュートラルを見据えた自然を活用した施策(NbS)の導入などを重点的に解説しました。日本のモデルは、流域全体の統合計画、多様な主体の協働、データ活用による柔軟なガバナンスなど、国際的なIWRM推進への示唆を提供していることを発信しました。
- 2025年ティース国際リバー賞は「フレンズ・オブ・ザ・シカゴ・リバー」が受賞
世界的に権威ある河川保全賞、ティース国際リバー賞(1999年創設、2年ごと授与)の2025年受賞者は「フレンズ・オブ・ザ・シカゴ・リバー」。同団体のシカゴ川復元活動が評価されました。
かつて放置され近づけなかったシカゴ川は、市民参加型の取り組みで活気ある都市の水辺に生まれ変わり、1927年以来初の川での市民水泳イベントも開催。1979年の活動開始当初は10種未満だった魚類は、現在75種以上に回復しました。
フレンズ・オブ・ザ・シカゴ・リバーは、復元活動や政策提言、地域参画を通じ数千エーカーの自然生息地を再生し、革新的な「ミシガン・アベニュー・フィッシュホテル」などのプロジェクトで水生生物を都市中心部に呼び戻しています。毎年6万人以上が参加し、河川保護のムーブメントを広げ続けています。
国際リバー財団マイケル・ライト議長は「彼らの成功は生態系再生と市民の誇りの遺産を示し、世界中の都市にインスピレーションを与える」と称賛しました。
- イブニングイベントでのメモリアル
イブニングイベントでは、2022年8月に逝去されたオーストラリア水センター創設者でAPWF元議長のマーク・パスコ―氏の功績が讃えられ、故人の水分野への貢献が参加者の胸に深く響きました。

(報告者:チーフ・マネージャー 朝山由美子)