
【RainWater Cambodia(RWC)の自主調査】
ダルビッシュ有水基金のフォローアップ調査は、現状を確認するためプロジェクト完了後約2年程度で行っています。昨年の実施団体RWCは8月に自主調査をされました。下記の通り、報告内容をお知らせします。
「雨水の力」ポーサット州ヴェアル・ヴェエン郡プロマオイ町ストゥントメイ村内貧困世帯への安全な飲料水アクセス支援(カンボジア)
1.完了プロジェクト概要
1)実施地
カンボジア ポーサット州 ヴェアル・ヴェエン郡 プロマオイ町 ストゥントメイ村
2)受益者数
652人
3)プロジェクト地の水問題
- カンボジアの貧困や社会から取り残された共同体では、人口の50%以上が安全でない表流水や地下水を直接飲んでいる。乾季には遠くまで水汲みに行くか水売りから購入する。
- ストゥントゥメイ村は共同井戸、ため池、ポーサット川と雨水利用を併用してきた。しかし、地下水には鉄分が多く、ため池や川には雨季に農業排水や化学物質が流入する等の汚染が発生した。幹線道路から離れた貧困世帯などへの支援は不十分だった。
4)プロジェクト期間
2024年7月~2025年1月
5)プロジェクト実施団体
RainWater Cambodia(RWC)
6)活動内容
- 20世帯に乾季終了時まで安全に貯水する雨水貯留システムを設置
- 8人に1日の水安全計画(Water Safety Plan)研修セッション
- ジャンボジャー3000L受取者に維持管理研修
- 住民代表25人と小学生83人に、1回ずつ飲料水と雨水利用研修会

伝統的雨水貯留システム例。
小さく、蓋や覆いなどの飲料水保護がない

3000L雨水貯水槽ジャンボジャー設置例
2.フォローアップ調査(2025年8月13日訪問)
1) Mr. Mao Theang(村側プロジェクト担当者)打ち合わせ
- 受取世帯は安全な飲料水にアクセスできるようになり、水を買わなくなった。
- 雨水貯留システムの運用および保守は、注意深く行われている。
- プロジェクト後、自費で自宅に雨水貯留システムを2基設置した。
- 雨水貯留システム設置需要は、多そうだとのこと。
2) 受取世帯#15視察
- 貯水槽内に水が確保されていた。
- システムの物理的な状態は良好で、飲料・調理・洗濯などに十分な水供給をしていた。
- このシステムに深く感謝していた。
3) 受取世帯#09視察
- 貯水槽から雨水を1.5リットルのペットボトルに詰めて利用する様子を視察した。
- プロジェクト後の屋根工事で竪樋を外して、貯水槽蓋を閉めていなかった。
- システム各部を維持管理するときの要点を、改めて指導説明した。
4) 受取世帯#05視察
- プロジェクトで受け取った雨水貯留システムの水は、主に飲料や調理用に利用していた。
- 掃除や入浴には、別の水源から得た水を伝統的水タンクに貯めて利用していた。
- 世帯の水需要がタイからの新帰国者によって増加したので、注意深い水利用を行っていた。
- 既に3回雨水貯留システム清掃を実施、非常に維持管理が行き届いていた。
- 貯水槽上部に漉し器を追加していた。
5)ストゥントメイ小学校校長先生聞き取り
- 毎週月曜の朝礼で教職員が生徒たちに水の安全講話をするそうで、プロジェクトのフォローアップを継続していた。
- 生徒たちは水の安全計画認識が高まったので、学校に水筒を持参して安全な水を飲むようになった。
【調査状況】




(右)貯水槽上部の水漉し器
3.考察と今後
1) 考察
- 安全な水供給に関する知識と実践が住民に根付いていた。
- プロジェクトで設置した施設はすべて良好な状態。受取世帯は満足していた。
- 村の担当者は雨水貯留システムを自宅に設置した。他の村民にも、需要があるそうだ。
2)今後の検討課題
- 受取世帯のシステム維持管理を、継続的にフォローアップ。
- より多くの受取者と共同体を対象として、持続性と影響の評価を調査する。
- タイからの新住民向けに、水・衛生・食料安全保障等支援ニーズがあるか調査する。
【まとめ】
RWCの自主調査の結果、プロジェクトの影響が想定より大きいと確認できました。また、最近の国境紛争によってこの村にもタイからの帰国者が来て水需要が増えたとわかりました。ダルビッシュ有投手をはじめ、当基金へご寄付いただいたみなさま、受益者、RWC等、多くの方々に改めて御礼申し上げます。
▼前記事: ダルビッシュ有水基金・第17号プロジェクト完了報告▼
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▼応援先: ダルビッシュ有水基金▼
https://www.waterforum.jp/what-we-do/darvish/
(報告者:プロジェクトマネージャー 鈴木武二郎)