
2027年3月に開催予定の第11回世界水フォーラムに向けて、準備プロセスの開始を告げるキックオフ会合がサウジアラビア・リヤドにて4月14~15日に開催されました。会合には、約60カ国から政府関係者、国際機関、民間企業、研究者、若者など幅広いステークホルダーが参加し、フォーラムの枠組みと優先課題について議論が行われました。
冒頭では、共催機関の代表が開会挨拶を述べました。世界水会議(WWC)のロイックフォーション会長は、水を世界の最優先事項にする必要性を強調し、このキックオフ会合は、サウジアラビアとの協力により、第11回フォーラムの方向性を定めるテーマ別、地域別、政治的な要素を盛り込んだ包括的な枠組みを策定することになると言及しました。サウジアラビアからは、アル・ファドリ環境・水・農業大臣が挨拶をし、統合水資源管理と国際協力の緊急性を訴えました。サウジアラビアは「サウジ・ビジョン2030」に基づき、水の長期需給計画の策定、水の経済・技術・安全保障に関する国際研究機関の設立も進めていることが紹介されました。また、WWC名誉会長のベネディト・ブラガ氏(第8回世界水フォーラム開催時の世界水会議〈WWC〉会長)より、WWCおよび世界水フォーラムの役割とこれまでの歩みが説明されました。
続くハイレベルパネルには、エジプトのヘイニ・スウィリアム水資源灌漑大臣、セネガルのCheikh Tidiane Dieye水と衛生大臣、サウジアラビアのアブドゥルアズィーズ・アル=シャイバニ環境・水・農業副大臣、中国水資源省ウー・ウェンチン主任研究官、インドネシア公共事業省のモハマド・ジナル・ファタ局長、そして「水の経済学 国際委員会」のヘンク・オヴィンク委員長が登壇しました。
エジプトのヘイニ・スウィリアム水資源灌漑大臣は、持続可能な水管理と国際的な協力の重要性を強調しました。エジプトは、AMCOW(アフリカ水・衛生会議)の議長国として、カイロ水週間やCOP27のホスト国として、世界の水問題にリーダーシップを発揮してきたことに触れ、特に水の安全保障、気候変動対策、そして水資源管理における行動と国際協力の加速を訴えました。また、自然に基づいた解決策や現地資源を活用した技術革新を推進し、河川流域での協力体制や国際法の遵守を通じた水外交の強化に言及しました。
サウジアラビアのアブドゥルアズィーズ・アル=シャイバニ副大臣は、水は人間の基本的な権利であり、経済の原動力でもあると述べ、持続可能な経済成長のためには水への投資が不可欠であると訴えました。サウジアラビアは、水の生産から再利用に至るまでを網羅する国家水戦略の下、水部門を優先課題として取り組んでおり、持続可能な解決策には資金調達、イノベーション、水外交、環境配慮など、複数の要素が必要であると強調しました。
中国水資源省のウー・ウェンチン主任計画官は、SDG6(安全な水と衛生)の達成が遅れていることに懸念を示し、新たな国際合意と深い協力が必要であると訴えました。中国が進めている水資源保全、空間計画、統合的管理の取り組みと、政府と市場の協働によるガバナンス体制を紹介し、持続可能な水管理に向けた中国の取り組みを強調しました。
インドネシア公共事業省のモハマド・ジナル・ファタ局長は、第10回世界水フォーラムの成果を振り返り、水を通じた繁栄の実現に向けた国際的な対話を強調しました。インドネシアでは、水・エネルギー・農業のネクサスを視野に入れた政策展開を進め、特に小島嶼国における水管理を優先課題とし、砂防センターやデータセンターを活用した能力開発を促進していること、また、水のフットプリント削減における民間企業の参加を促し、世界標準の指標を導入していることを紹介し、政治的コミットメントと財政制度への議論が水外交において不可欠であると訴えました。
第11回世界水フォーラムの全体テーマおよびサブテーマの概要は、サウジアラビアの環境・水・農業省 水研究・モデリング局長のDr. Abdulaziz Ali Alqahtani氏と、WWC 戦略・開発ディレクターのYoonjin Kim氏より紹介されました。
今回のフォーラムの全体テーマは「Actions for a Better Tomorrow(より良い明日への行動)」であり、このテーマのもと、以下の6つのサブテーマが設定されました:
- 水の安全保障
- 水課題への資金調達
- 水外交
- 人と自然のための水
- 水の価値
- 水イノベーション
各サブテーマに関するブレークアウトセッションでは、基本構成や主要キーワード、扱うべきトピック案について活発な意見交換が行われました。また、政治プロセスの枠組みについての議論も並行して進められました。
地域プロセスに関する全体セッションでは、第10回フォーラムでの各地域の経験が共有され、アジア・太平洋地域プロセスの成果については、同地域プロセスのコーディネーターを務めたアジア太平洋水フォーラム(APWF)の朝山由美子チーフマネージャー(筆者)と、アジア水会議(Asia Water Council)のDr. Cho Yong Deok氏が共同で報告。中東地域に関しては、アラブ水会議(Arab Water Council)が再び地域プロセスを主導する意向を表明しました。

会合の最後に、世界水会議(WWC)のÉric Tardieu副会長が2日間の成果を振り返り、「ポジティブ・アクション・アジェンダ」を通じて共に前進していく重要性を強調しました。総括の中で、今後の世界水フォーラムに向けた3つの横断的な柱として「関与(Engagement)」「統合(Integration)」「行動(Action)」を提示しました。Tardieu副会長は「対話を実際のインパクトにつなげる」ことの重要性を訴え、今後の実践に向けた意志を共有しました。
今後、第11回世界水フォーラムに向けて、テーマ別・政治・地域の3つのプロセスが連携し、世界の水課題に対する実践的なアクションの形成に向けた議論が加速していきます。

会合アジェンダ
1日目 |
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09:00-10:30 |
開会式 |
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・開会の辞 WWCフォーション会長 |
10:30-11:00 |
休憩(コーヒーブレイク) |
11:00-11:30 |
第10回世界水フォーラム(前回)のフォローアップ |
11:30-12:00 |
第11回世界水フォーラムの概要とキックオフ会合 (包括的なテーマと枠組み、キックオフ会合のガイドライン) |
12:00-13:30 |
昼休憩 |
13:30-14:30 |
政治プロセス: 目的と期待される成果(非公開:招待制) |
13:30-15:30 |
テーマ別プロセス: テーマとトピックスの計画と発展Ⅰ. |
(並行開催)ブレークアウトセッション1. |
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19:00- |
ウェルカム・ディナー |
(第11回世界水フォーラム・国際運営委員会(ISC) 会合 16:00-)
2日目 |
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09:00-11:00 |
テーマ的プロセス: テーマとトピックスの計画 |
(並行開催)ブレークアウトセッション 2. |
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11:00-11:30 |
休憩(コーヒーブレイク) |
11:30-12:30 |
地域的プロセス: 目的と期待される成果 (全体会議) |
12:30-13:30 |
昼食 |
13:30-14:30 |
総括と閉会 |
15:00- |
テクニカルビジット |
(報告者:チーフ・マネージャー 朝山由美子)