第7回APWFウェビナー開催結果概要

日時:2021年2月4日(木)14時30分~15時30分(日本時間)
トピック:水の安全保障のための統合水資源管理(IWRM)ー食料、気候変動への適応、包摂的な成長のためにわかったこと
スピーカー: 
マース・スミス氏 国際水研究所(International Water Management Institute(IWMI))所長

第7回APWFウェビナーでは、水管理に関する国際的な遷移を経て、IWRMがどのように定義づけられたかを紹介しました。初期のIWRMは、(1)実現可能にする基盤構築(政策、法律、計画)、(2)明瞭で確固とし、包括的な制度枠組み、(3)技術的手段の効率的利用と管理:データ、水分配、汚染コントロール、(4)適切な資金を利用した水インフラへの投資、という4つのIWRMの概念が定義されました。一方、この定義は、トップダウンで水管理を行っていくやり方のみで、複雑な課題に対処しながら他のセクターと共同でいかに実践をしていくかということは注力されていないため、多くの批評がありました。

より実践に注力したIWRMにしていくために、スミス氏は、コモンズ論の研究で2009年にノーベル経済学賞を受賞したエリノア・オストロム博士の「Adaptive governance for change」に着目し、上記4つの定義に加え、(5)効果的な戦略を動的に促進し、すべてのレベルの変化を管理する、(6)戦略設定と問題解決をつなぐメカニズムの運用、を含めて包括的に取り組んでいくことが重要であるとしました。

6つの各柱を実際の政策や制度設計に取り入れたネパールやウズベキスタン、中央アジア(ウズベキスタン、キルギス、タジキスタン)における好事例及び教訓を紹介し、IWRMを6つの柱の観点から取り組んでいくことによるベネフィットも提示しました。

スミス氏は、水・エネルギー・食料ネクサス、企業の水スチュワードシップ、表流水と地下水の一体的管理、統合洪水管理、統合渇水管理、 水源から海までの水資源管理をIWRMと競合する水管理の考えとしてとらえるのではなく、SDG6.5:IWRMの実施にかかる全体指針としてとらえ、取り組んでいくことの必要性についても強調しました。

また、水は分野横断的にあらゆることに結びついていることを鑑み、IWRMの実践的な実施は、他のSDGsをつなぎ、水関連課題に対して体系的な解決策の実施に重要な役割を担うことを、食料システムの変化、気候変動に対する強靭性、社会的包摂性とジェンダーの平等の促進とのつながりに関する事例とともに説明しました。

発表資料・動画:
http://apwf.org/7th-apwf-webinar-operationalizing-iwrm-to-build-water-security-what-are-lessons-for-food-systems-climate-change-adaptation-and-inclusive-growth/

(報告者:朝山由美子 マネージャー)

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