JWF News 4月号 世界水フォーラムinブラジル―20数年の歳月―

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【JWF News Vol.162】世界水フォーラムinブラジル―20数年の歳月―
2018年4月11日発行

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◇目 次◇

・巻頭言 世界水フォーラムinブラジル―20数年の歳月―

・第8回世界水フォーラムでの日本水フォーラムの取り組み
– 第8回世界水フォーラム概要
– 第8回世界水フォーラム地域プロセス「アジア太平洋地域」を主導
– 第8回世界水フォーラム 第5回京都世界水大賞の授賞式を開催
– 第8回世界水フォーラム テーマ別議論への参画
– 第8回世界水フォーラム エキスポ「日本パビリオン」

・日本水フォーラムからのお知らせ
– ダルビッシュ 有 水基金 第12号プロジェクト(パキスタン) 開始しました!

・日本水フォーラムからの報告
– シンポジウム 『国連【世界水の日】記念・水未来会議2018』を開催しました
-人口減少時代の水道料金はどうなるのか? 研究結果(改訂版)を発表―水の安全保障戦略機構

・採用情報

・活動へのご支援・ご協力のお願い

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・巻頭言 世界水フォーラムinブラジル―20数年の歳月―
代表理事 竹村公太郎

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ブラジルでの第8回世界水フォーラム
ブラジルで第8回世界水フォーラムが開催されました。3月19日、皇太子殿下の御臨席を賜り開会式が盛大に執り行われました。開会式で皇太子殿下は、世界の多くの人々の協力で第8回世界水フォーラムが開催されることへのお祝いのお言葉を述べられました。

開会式の午後、「水と災害」ハイレベルパネルにおいて「繁栄・平和・幸福のための水」という題名で基調講演をなされました。タイトルで示されているように、水は平和の源であることを、日本の歴史を踏まえて講演され、世界中の多くの人々に深い感銘を与えられました。
翌20日の午前、日本パビリオンを視察なされ、各出展者の説明に熱心に質問なされ、九州の遠賀川から参加している学生たちと親しくお話をされ、遠くブラジルまで来た日本パビリオン出展者たちを励まされました。
その日の午後も、ご関心のあるいくつかのテーマセッションに参加され、世界の水を巡る課題を熱心に聴講されておられました。

私はアジア太平洋地域のコーディネーター事務局として、日本パビリオン出展運営の責任者として、この世界水フォーラムに参加しました。

20数年前のリオ・環境サミット
私のブラジル訪問は今回で2度目です。最初は、20数年前の1992年、ブラジル・リオデジャネイロで開催された国連による地球環境サミットでした。世界中の首脳、政府、企業、研究者、NGOそして市民団体が集まり、地球環境をいかに守るかを議論する初めての大規模な国際会議でした。

当時、私は建設省河川局のダム建設の調整官でした。リオ出張の任務は、長良川河口堰事業の必要性を説明することでした。事業の説明という目的以外にも、任務がありました。
そのころ、開発に反対する世界の市民団体はかなり過激でした。国際会議の舞台を占拠するなど直接的な行動をとっていました。このリオ・環境サミットに、長良川河口堰の反対団体が出席するとマスコミ報道によって知りました。彼らが本会議場の舞台で長良川河口堰反対の直接行動した場合、私たち事業者としても意見を表明する必要があります。何が起こるか予測がつかないまま、リオ・環境サミットに向かいました。正直言って、私の頭の中は環境どころではなかったのです。

ところが、私はこのリオ・サミットで、深い衝撃を受けていたのです。

異様なフランス代表団
世界各国は本格的な政府代表団を形成して、ブラジルのリオに乗り込んでいました。その中でフランス代表団には驚かされました。フランスは政府機関と市民団体が一緒に代表団を形成していたのです。
政府機関とNGOや市民団体が一緒のチームを組んでいるなんて、日本の私たちにとって、信じられない光景でした。なにしろ、日本では公共事業と環境団体は何かにつけ対峙していた時期だったのです。

日本は行政だけの政府代表団でした。外務省、環境庁、建設省、農林水産省、通産省などの構成です。代表団といっても、実態は、各省縦割りの寄せ集めチームです。各省は行動予定の連絡は取りますが、内容の連携はありません。ましてや、政府機関と民間団体が一緒の行動をとり、会議に向かって相談をして、対応策を練っていくなどありえなかったのです。

「フランスはなんて異様な国なんだ!」という思いが私の心の中に澱んでいったのです。

リオから帰国してからも、長良川河口堰は苦闘の中にいました。ボクシングでいうなら、リングのコーナーに追い詰められ、ダウン寸前だったのです。建設省内でも、河川局はダメになるのではないか、と心配されていたようです。そこまで追い込まれた日本の河川行政は、徐々に変身していったのです。

河川行政の進化
長良川河口堰では、技術資料や環境資料を新たに作成し、社会に公表していきました。テレビカメラに囲まれた完全公開の円卓会議も繰り返し行いました。観測データの完全情報公開も行いました。

そして、1997年、河川法の大改正をしました。第1条の目的に「環境保全」を追加したのです。第1条の目的に入れたということは、「環境に配慮した河川工事をしよう」ということではないのです。「環境保全そのものをしよう」ということなのです。全国の河川管理の現場では、住民たちと一緒になった環境保全活動が活発に動き出しました。

河川法改正のもう一つの目玉は、河川の長期計画の立案時に「住民の意見を聞く」制度を入れたことです。それまで河川の計画策定は、河川管理者側だけの作業でした。これ以降、住民を含め多様な人々の意見を聞く場が法的に設けられたのです。

典型的な国内派だった河川行政は、国際的な動向にも敏感になっていきました。3年ごとに開催される世界水フォーラムに参加していったのです。2000年のオランダの第2回世界水フォーラムに河川関係者を派遣しました。2003年には、日本で第3回世界水フォーラムも開催しました。2006年のメキシコでの第4回世界水フォーラムには、初めて日本館を出展しました。第5回トルコ、第6回フランス、第7回韓国、そして今回の第8回のブラジルと日本館を出展してきました。

メキシコで初めて出展した日本館には、各省、各企業そしてNGOも参加しました。しかし、各組織はコーナーを壁で仕切った長屋形式の展示出展でした。そのメキシコの日本館を運営していた私の脳裏に、あのリオ・サミットのフランスの代表団が浮んできました。

次のトルコからは、仕切りを取り外すことを提案しました。中央政府、地方自治体、大学、民間企業そしてNGOが混然一体となって日本館を構成したのです。そのスタイルが今回のブラジルまで続いてきたのです。

Stakeholders(関係者)
水の国際会議では必ず、「水問題は全てのStakeholdersが参加して解決に当たっていくべき」と主張されています。
このスローガンは美しいのですが、実態は大変難しい課題なのです。ライバル(Rival)の語源はリバー(River)です。水を巡る関係者で仲が良い話など聞いたことがありません。仲が悪いから「水問題は全てのStakeholdersで解決」というスローガンが掲げられるのです。

この水分野で、世界水フォーラムの日本館は、「全ての水関係者の参加」を具体的に表現しているのです。

今回のブラジルのパビリオンには、19ヶ国と87の組織が出展していましたが、日本館のような形式の館は見当たりませんでした。日本館は極めて特異な館でした。日本館が最も人気があった、という評判も聞きました。多様な機関が集まり、何となくざわついていたので活気がある、とみられたのでしょう。

日本では2014年に水循環基本法が成立しました。流域協議会のすべての水関係者によって、流域の水問題を解決していこうという動きがスタートしました。法制度による動きは、開始されたばかりです。しかし、形式の上では、世界水フォーラムの日本館が、その先を走っているのです。

名実ともに日本社会が、世界水フォーラムの日本館に追いつく日が、日本が世界の水のトップリーダーとして貢献していける時なのでしょう。
リオ・環境サミットから20数年、日本の水行政と水関係者の意識は、世界の最先端を走るところまで進化しました。私自身がそれを目撃し、体験したので断言できるのです。

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・第8回世界水フォーラムでの日本水フォーラムの取り組み

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-第8回世界水フォーラム概要

世界中の水関係者が一堂に集い、地球規模の水関連課題の解決策を議論する国際会議「世界水フォーラム」が3月18日~23日まで、ブラジルにて開催されました。

持続可能な開発目標(SDGs)採択後、初めて開催された今回の世界水フォーラムは、内外で高い関心を集め、全体で172カ国より、元首級12名、大臣・閣僚級70名を含む約12万人の参加を集めました。全体テーマ「Sharing Water」(水を分かち合う)の下、多様な観点より、活発な議論がなされました。

日本からは、皇太子殿下が9年ぶりにご臨席されました。政府からは、秋本国土交通大臣政務官、さらに、自治体、民間企業、学界、市民団体より多数の参加がありました。 

日本水フォーラムは、アジア太平洋地域のとりまとめ役として、昨年12月に開催した「第3回アジア・太平洋水サミット」の成果をインプットする共に、テーマ別議論に参画し、各分野の世界の最新動向に関する情報収集と併せ、日本の叡智を世界に発信するなど、様々な活動を展開しました。

▼第8回世界水フォーラムについては、公式ウェブサイト(英語)をご覧ください▼
http://www.worldwaterforum8.org/

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-第8回世界水フォーラム地域プロセス「アジア太平洋地域」を主導

アジア・太平洋水フォーラム(APWF、事務局:日本水フォーラム)は、第8回世界水フォーラムの地域プロセスにおいて、アジア太平洋地域のコーディネーターを務めました。第5回(トルコ)、第6回(フランス)、第7回(韓国)に続き4回目です。
その集大成が「アジア太平洋地域プロセス報告書」としてまとめられました。
また、同地域のとりまとめとして、「アジア太平洋地域プロセス統括セッション」を主催しました。
更に、先に開催された「第3回アジア・太平洋水サミット」での成果の発信にも傾注。第8回世界水フォーラムの「地域プロセスからのメッセージ」(地域プロセス全体としての発表)にも、その要素を織り込みました。

▼アジア太平洋地域プロセス報告書(英文)▼
https://www.waterforum.jp/wp/wp-content/uploads/2018/04/8thAP_0.pdf

▼アジア太平洋地域プロセス統括セッション概要(英文)▼
https://www.waterforum.jp/wp/wp-content/uploads/2018/04/8thAP_Syntehsis_s.pdf

(報告者:マネージャー 朝山由美子)

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-第8回世界水フォーラム 第5回京都世界水大賞の授賞式を開催

「京都世界水大賞」は、途上国の水問題に向けて優れた活動を続ける草の根団体を顕彰する、国際的な賞です。

2018年3月、第8回世界水フォーラムの閉会式において、144件の応募から大賞に選ばれた、トーゴの草の根団体「Charité Chrétienne pour Personnes en Détresse (CCPD)」へ、共催代表と協賛代表から賞金200万円が贈られました。現地プロジェクトの企画から実施まで、すべての過程に住民が参加する手法が高く評価されたものです。
CCPDは2018年5月~2019年7月にかけ、賞金を用いて自国の水問題解決のためのプロジェクトを実施します。

▼詳しくはこちら▼
https://www.waterforum.jp/jp/2018/0410/?p=7911

(報告者:マネージャー 郡司晃江)

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-第8回世界水フォーラム テーマ別議論への参画

日本水フォーラムは、第8回世界水フォーラムにおいて、「ステークホルダーの参画」セッションを主催するなど、国際的な議論をリードしました。また、「脱炭素社会における水サービス」、「循環経済の推進」、「表流水と地下水の効率的利用」といった今後の重要課題について、世界の潮流を把握すると共に、関連する日本の経験・技術の情報発信に努めました。

▼詳しくはこちら▼
https://www.waterforum.jp/jp/news/2018/0410/?p=8100

(報告者:副ディレクター 浅井重範)

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-第8回世界水フォーラム エキスポ「日本パビリオン」

 日本水フォーラムは、第8回世界水フォーラムのエキスポに出展された「日本パビリオン(日本政府主催)」の企画運営協力を務めました。
日本パビリオンは、産官学民の17出展者(22企業・団体)の参加を得て、SDGs達成や健全な水循環に資する日本の技術や取り組みを世界に発信しました。
官民一体の日本パビリオンは、多彩で具体性の高い出展内容で、連日、多くの来場者で賑わう人気の高いパビリオンとなりました。

▼詳しくはこちら▼
https://www.waterforum.jp/jp/news/2018/0410/?p=8098

(報告者:副ディレクター 浅井重範)

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・日本水フォーラムからのお知らせ

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-ダルビッシュ 有 水基金 第12号プロジェクト(パキスタン) 開始しました!

ダルビッシュ 有 水基金の第12号プロジェクトが、パキスタン北部のハイバル・パフトゥンハー州チャルサダ郡で開始されました。対象地域は恒常的に洪水が発生し、溢れた水が既存の井戸に流れ込むため、井戸の水が汚染されてしまいます。このような状況にある安全な飲み水の確保が課題となっています。
本プロジェクトによって洪水の水が入り込まない仕組みの井戸を建設することで、404人の住民たちが安全な水源を利用できるようになります。

▼詳しくはこちら▼
https://www.waterforum.jp/jp/news/2018/0406/?p=7823

(報告者:マネージャー 郡司晃江)

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・日本水フォーラムからの報告

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-シンポジウム 『国連【世界水の日】記念・水未来会議2018』を開催しました

日本水フォーラムは、今年2月27日(火)、シンポジウム『国連【世界水の日】記念・水未来会議2018』を開催しました。

昨年2月には、持続可能な社会の構築に向けた取組み方針として、「ESG投資の潮流」を背景に「企業との連携・協働」を取り上げた「水未来会議」。
今回は、企業との連携・協働をどのように構築できるか、環境課題への取組みが企業経営上の戦略として位置づけられていくとは具体的にどのようなことか、取組み方案を中心に議論しました。

本シンポジウムを通して得られた成果は、「水未来会議からのメッセージ2018」として公表予定です。

▼詳しくはこちら▼
https://www.waterforum.jp/jp/news/policyrecommendations/2018/0309/?p=7867

(報告者:マネージャー 桑原清子)

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-人口減少時代の水道料金はどうなるのか? 研究結果(改訂版)を発表―水の安全保障戦略機構

新日本有限責任監査法人(以下、新日本監査法人)と水の安全保障戦略機構事務局は、共同研究結果である「人口減少時代の水道料金はどうなるのか?」(改訂版)を、2018年3月29日に発表しました。

本研究結果は、現在の水道事業経営を維持していくとした場合に2040年時点までに想定される水道料金改定率を、最新の公表統計データを元に事業体別に作成したもので、2015年に続き2回目の実施となります。 

▼詳しくはこちら▼
https://www.waterforum.jp/twj/dl/index.html

 (報告者:マネージャー 野口 淳)

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・採用情報

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-アシスタント・マネージャー募集

現在日本水フォーラムでは、アシスタント・マネージャーを募集しております。
日本水フォーラムのミッションとビジョンを理解し、地球上の水問題解決に貢献したいという、強い意志をお持ちの方のご応募をお待ちしています。
ご質問等、お気軽にE-mail (recruit[at]waterforum.jp)またはお電話にてお問い合わせ下さい。

▼募集内容の詳細はこちら▼
https://www.waterforum.jp/jp/news/recruit/2018/0309/?p=4234

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・活動へのご支援・ご協力のお願い

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日本水フォーラムは、皆様の会費及び寄付等によって国内外の水問題解決に向けた活動を行っております。
日本水フォーラムの活動を支援していただける会員を募集しております。
水問題解決に向けた持続可能な取組みを行うために、皆様の温かいご支援をなにとぞよろしくお願いいたします。

▼会員募集の詳細はこちら▼
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日本水フォーラムは、国内外の水問題解決に向けて分野問わず幅広い方々と協働で活動を展開しています。
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