JWF News 12月号 日本人の精神性と富士山

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【JWF News Vol.147】 日本人の精神性と富士山
2016年12月7日発行

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◇目 次◇

・巻頭言 日本人の精神性と富士山

・日本水フォーラムからのお知らせ
-【聴講者募集】コルカタ(インド)地域防災・人材育成プロジェクト報告会
-インドでの地域防災、人材育成プロジェクト 実施のお知らせ

・日本水フォーラムからの報告
-平成28年度評議会 開催報告
-SMILE by WATER:2016年度プロジェクトが完了しました!
-第4回京都世界水大賞 現地活動が完了しました!
-スマートエンジニアリングTOKYO2016特別セミナー「インフラシステム国際展開の未来と水課題」を開催しました
-第1回韓国国際水週間 – 韓国による第7回世界水フォーラムのフォローアップ-
-水と災害ハイレベル・パネル(HELP)第8回会合が開催されました

・採用情報

・活動へのご支援・ご協力のお願いについて

・掲示板コーナー

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・巻頭言 日本人の精神性と富士山 代表理事 竹村公太郎

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11月初旬、新幹線で名古屋に向かいました。熱海のトンネルを過ぎると「右手に富士山が見えます」という車内アナウンスがありました。間もなく本格的に紅葉を迎える秋晴れの中、美しい富士山がそびえ立っていました。富士山がそびえ立つ姿はやはり圧倒的でした。この富士山の圧倒的な姿を見ていて、日本人である私の弱みを再確認していました。

孤高の富士山
富士山は日本のシンボルであり、日本人の誇りです。何しろ日本一の高さで、他の山の追従を許さずそびえ立つ山です。冬、雪をまとう姿も他の山を圧倒する美しさです。高さも、美しさも、文句なしの日本一の存在です。
私を含めて日本人は、この圧倒的な富士山に大きな精神的な影響を受けていることに気が付きました。影響を受け過ぎている、と表現したほうがよいかもしれません。
富士山は孤高な山です。富士山一つだけでそびえ立つ山です。周辺の山々の中の一つではありません。One of Themではないのです。だから富士山は日本のシンボルで、日本人の心の支えの山なのです。(図-1)は初冬の富士山です。

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図-1 初冬の富士山

富士登山のゴール
日本人はこの富士山に登ることと、自分の人生の歩みをだぶらせてしまいます。杖を突き、自分の肉体を信じて一心に斜面を登ります。そして、頂上の一歩手前の山小屋で夜を過ごし、早朝、暗いうちから活動を始め、頂上に向かいます。その富士山の頂上で、水平線から登ってくる朝日を「御来光」として手を合わせ、自分たちの思いや願いを心の中で念じます。
富士登山は、この頂上での儀式が最終ゴールなのです。頂上での儀式が終われば、そこで富士登山は終了し、下山して家路につくだけです。富士登山は、頂上が目的で、次の目的はないのです。
日本人にとっては、この感覚は当たり前のことです。
しかし、この日本人の感覚とは全く異なる感覚を持つ登山があることを学びました。頂上が目的ではなく、頂上から下山するまでを目的とする登山です。
それは、ピーター・フランクル氏の言葉で知りました。

登頂と下山
ピーター・フランクル氏は著名な数学者です。日本で生活しているユダヤ系フランス人で、日本を客観的に見て、上手な言葉で表現してくれます。
ある時、私は友人のジャーナリストと、日本の人口問題を議論していました。私は友人に、日本の千年間の人口のグラフを示しました。

「日本文明の一つの指標として人口動向がある。この人口動向を見る限り、今、日本文明は頂上に立ってしまった。人口トレンドという山の頂上に立って、豊かさという目標を達成した日本は、今後、何を目指して進んでいくのか?日本社会は文明の頂点に達し、次の目標を見い出すことが出来ていない。その困惑が日本を覆っている」

と発言しました。(図-2)は日本人口の、過去一千年と今後百年の推計のトレンドです。

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図-2日本人口の、過去1千年と百年後の推計

友人のジャーナリストは、その私の言葉に誘発され、ピーター氏の言葉をふっと思い出して、私に教えてくれました。

「ユダヤの民は山の頂上にたどり着くと、その山に連なる次の山へ登っていく。そのために、山を下山するのです。登ったら下りる。山の頂点が目的ではないのです。次の山を登るために下山することも、次の目的へ向かう大切な過程なのです」

友人のジャーナリストがピーター氏にインタビューしている時のこと、ピーターさんは、ユダヤ人を山登りに譬えて表現したというのです。(図-3)は、エジプトのシナイ山から見た険しい山々の連なりです。
友人を通じたピーター氏の言葉は、私の頭の中でもやもやとしていた霧を吹き去ってくれました。
山を登ることが大切なのではなく、登り、そして下山することが大切なのです。次の山に向かっていくには、下山をしなければならないのです。山は登頂して終わりではありません。山々は連なり、次々と目の前に展開されていきます。次々と連なる山を登って下りることが人生であり、人間が文明を創った姿そのものなのです。

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図-3 シナイ山から見た山々


地形と気象と国民性
連なる山々
今、私たちの目の前には、山々が連なっています。それはみな地球規模の課題という厳しい山々です。
一つが、未来における化石エネルギーの逼迫です。二つ目が、食料・水資源の逼迫です。そして三つ目が環境の悪化です。最後に、最も険しい山が気候変動です。
これらの課題を人類は克服していかなければなりません。日本人も同じです。日本人は、富士山の頂上に立ち「登山は終わった」と気を抜いてはいけないのです。次の山の頂上を目指すために、下山しなければなりません。
日本の人口はピークにあります。ピークにある人口は必ず減少していきます。この日本人口の減少に恐れる必要はないのです。この現象は、日本文明が次の険しい山を登っていくための準備なのです。
私は「その国の人々の性格や歴史は、その国の地形と気象によって規定されている」と主張してきました。
その私自身が、富士山によって長い間精神的制約を受けていたことに気が付きませんでした。ピーター氏の言葉によってそのことに気が付いたのです。
個人の人生や社会の文明は、眩しいほど美しい富士山に登ることが目的ではないのです。次々と目の前に展開される険しい山々に向かって挑戦し、それを克服していく一連の活動そのものが人生であり、文明なのです。

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・日本水フォーラムからのお知らせ

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【聴講者募集】コルカタ(インド)地域防災・人材育成プロジェクト報告会

日本水フォーラムは、第11回TOTO水環境基金の助成を受け、インドのコルカタでの地域防災、人材育成プロジェクトを実施しています。
12月に現地での活動を完了することを受け、来年1月18日(水)に東京で報告会を実施することになりました。
コルカタのスラムが直面している洪水と住環境の現状、その現実に住民がどのように向き合っているのかをお伝えするとともに、地域防災や地域衛生環境向上のための活動についてご紹介します。

▼詳しくはこちら▼
https://www.waterforum.jp/jp/news/2016/1207/?p=3957
(報告者:マネージャー 石原小枝)

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インドでの地域防災、人材育成プロジェクト 実施のお知らせ

第11回TOTO水環境基金の助成を受け、日本水フォーラムはインドのコルカタでの地域防災、人材育成プロジェクトを実施しています。
インドのみならず、アジアの都市の多くでは、豪雨、洪水、渇水、侵食、台風などによる水災害が発生し、人びとの生活や都市の経済・社会基盤に大きな影響を与えています。こうした水災害の発生頻度や被害は、気候変動の影響や都市化とそれに伴う人口の増加も重なり、年々深刻になっています。
被災後の復旧および、予防に関して、地域住民によるリスクの理解、自助や共助のしくみ作りは今後一層重要になります。

▼詳しくはこちら▼
https://www.waterforum.jp/jp/news/grassroots/2016/1104/?p=3133
(報告者:マネージャー 石原小枝)

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・日本水フォーラムからの報告

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平成28年度評議会 開催報告

日本水フォーラムは、11月18日(金)にTKP赤坂駅カンファレンスセンター(港区)にて平成28年度評議会を開催しました。評議会では、評議員、関係省庁、会員、理事・監事等、総勢71名のご参加のもと、前年度評議会以降の活動報告の他、2017(平成29)年開催予定の第3回アジア・太平洋水サミット、2018(平成30)年3月開催の第8回世界水フォーラムに関する日本水フォーラムの取り組みについて、評議員ほか皆様からご指導ご助言を頂きました。

▼詳しくはこちら▼
https://www.waterforum.jp/jp/news/2016/1125/?p=3838
(報告者:マネージャー 桑原清子)

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SMILE by WATER:2016年度プロジェクトが完了しました!

2015年9月、国連本部で国連持続可能な開発目標(SDGs)が採択されたことを受け、公益社団法人日本青年会議所はSMILE by WATERキャンペーンを発足し、2020年までの間、「目標6・すべての人々に水と衛生へのアクセスと持続可能な管理を確保する」の実現に向けた運動を展開することを決定しました。
キャンペーン初年度である2016年度は、公益社団法人日本青年会議所と日本水フォーラムが共同し、農村部における安全な飲み水の確保を目的としたSMILE by WATERプロジェクトを実施しました。

▼詳しくはこちら▼
https://www.waterforum.jp/jp/news/2016/1121/?p=3818
(報告者:マネージャー 石原小枝)

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第4回京都世界水大賞 現地活動が完了しました!

京都世界水大賞は、途上国で水問題解決に尽力する団体等を称える国際的な賞として、3年に1度開催される国際会議「世界水フォーラム」にあわせ、2003年より実施されています。
京都市と世界水会議により設立された京都世界水大賞は、第4回より日本水フォーラムと世界水会議が共催しています。
2015年に開催された第4回京都世界水大賞には、37カ国から110件の応募が寄せられ、選考の結果、ネパールの団体「Environment and Public Health Organization (ENPHO)」が大賞を受賞しました。

▼詳しくはこちら▼
https://www.waterforum.jp/jp/news/2016/1114/?p=3637
(報告者:マネージャー 石原小枝)

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スマートエンジニアリングTOKYO2016特別セミナー「インフラシステム国際展開の未来と水課題」を開催しました

10月27日(木)、東京ビッグサイトにて、スマートエンジニアリングTOKYO2016(主催:(財)日本能率協会)が開催されました。その中で日本水フォーラムは、特別セミナー「インフラシステム国際展開の未来と水課題」を開催いたしました。
「水インフラ国際展開に向けた新たなきっかけ作り」をテーマに、三井物産戦略研究所シニアフェローの本郷尚氏、国際協力銀行の金森氏をお招きし、国内外の水インフラを取り巻く過去から現在の状況を振り返りながら、今後に向けた具体的な戦略やスキームについて具体策の提示や、質疑応答を行いました。

▼詳しくはこちら▼
https://www.waterforum.jp/jp/news/2016/1110/?p=3225
(報告者:マネージャー 佐藤啓)

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第1回韓国国際水週間 – 韓国による第7回世界水フォーラムのフォローアップ-

10月19~22日にかけて韓国・大邱市で開催された第1回韓国国際水週間(Korea International Water Week: KIWW)に参加しました。KIWWは、2015年4月に第7回世界水フォーラムをホストした韓国が、そのフォローアップ活動として、産官学が協働で、水問題の解決に向けた具体的実施策を提示することを目的に創設した最初のイニシアティブです。

▼詳しくはこちら▼
https://www.waterforum.jp/jp/news/2016/1116/?p=3239
(報告者:マネージャー 朝山由美子)

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水と災害ハイレベル・パネル(HELP)第8回会合が開催されました

水と災害ハイレベル・パネル(HELP)第8回会合がジャカルタ(インドネシア)にて開催されました。
2015年3月に採択された仙台防災枠組、2015年9月に採択された国連持続可能な開発計画(SDGs)、2015年12月に採択されたパリ協定、また国内では2015年7月に閣議決定された水循環基本計画など、国内外の水課題解決の枠組みが新たな局面を迎えるなか、各国・国際機関が水災害軽減に向けて協調する取り組みの強化を目指しています。

▼詳しくはこちら▼
https://www.waterforum.jp/jp/news/2016/1125/?p=3360
(報告者:マネージャー 石原小枝)

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・採用情報

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アシスタント・マネージャー募集

現在日本水フォーラムではアシスタント・マネージャーを募集しております。
日本水フォーラムのミッションとビジョンを理解し、地球上の水問題解決に貢献したいという、強い意志をお持ちの方のご応募をお待ちしています。
ご質問等、お気軽にE-mail (recruit[at]waterforum.jp)またはお電話にてお問い合わせ下さい。

▼募集に関する詳細はこちら▼
https://www.waterforum.jp/jp/news/recruit/2016/1206/?p=3968
(担当者:マネージャー 石渡京子)

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・活動へのご支援・ご協力のお願いについて

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日本水フォーラムは、皆様の会費及び寄付等によって国内外の水問題解決に向けた
活動を行っております。日本水フォーラムの活動を支援していただける
会員を募集しております。
水問題解決に向けた持続可能な取組みを行うために、皆様の温かいご支援を
なにとぞよろしくお願いいたします。

▼会員募集の詳細はこちら▼
https://www.waterforum.jp/jp/get_involved/pages/become_a_member.php

日本水フォーラムは、国内外の水問題解決に向けて分野問わず幅広い方々と
協働で活動を展開しています。
日本水フォーラムの活動にご協力いただける方、ご興味のある方は
以下よりお問い合わせください。

▼問い合わせ先はこちら▼
TEL: 03-5645-8040
E-mail: news[at]waterforum.jp
※[at]をアットマークに変えて送信してください。

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・掲示板コーナー

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出版物ご案内
『Sanitation and Sustainable Development in Japan』(英文)
発行:アジア開発銀行(ADB)、2016年11月
https://www.adb.org/publications/sanitation-and-sustainable-development-japan

※免責事項:日本水フォーラムは、掲示板の掲載情報に関して責任を負いかねます。
掲載情報へのお問い合わせは各主催者へお願いいたします。

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JWF News Vol.147    平成28年12月2日発行
特定非営利活動法人日本水フォーラム
〒103-0015 東京都中央区日本橋箱崎町5-4 アライズ第2ビル6階
TEL: 03-5645-8040 FAX: 03-5645-8041
E-mail: news[at]waterforum.jp URL: https://www.waterforum.jp
※[at]をアットマークに変えて送信してください。

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