気候変動と水分野
日本水フォーラムは、2016年3月1日、「世界水の日」のイベントとして「水未来会議」を開催しました。場所は衆議院第一議員会館会議室をお借りし、約150名もの参加者の方々をお迎えして行いました。
テーマは「気候変動と水分野」に焦点を当てました。気候変動に伴う課題は、気候変動にいかに対処するかの『適応策』と、気候変動に深く関わるCO2削減にいかに貢献していくかの『緩和策』です。
気候変動は「気象の狂暴化」として私たちの前に現れてきます。気象の狂暴化とは、過去の気象データの想定範囲から大きく外れた気象現象の頻発です。思いもしなかった豪雨に伴う大洪水、長期大干ばつに伴う大渇水、それらが人類を襲ってきます。適応策については、今までも水分野で様々の検討がなされ、実施に移されています。
適応策
日本では河川の規模や重要性によって異なりますが、一般的には100年に一度の大洪水に対応する堤防、ダム、遊水池が計画され建設されています。しかし、そのインフラ整備はいまだ途上にあります。
気象はこの100年に1回の想定をいつかは必ず超えます。なにしろ、この国土で日本人はこれからも、200年、300年いや千年、生きていくのです。ですから200年に一度、300年に一度の洪水は、必ず襲ってくるのです。気象が狂暴化すると、今まで300年に一度と思っていた大洪水が頻繁に襲ってくる事態となります。
ハード対策を着実に進めることと、適確な情報伝達、円滑な避難システムのソフトの合わせ技で被害軽減を図っていくこと、それが適応策では重要です。
干ばつに関しては、日本では10年に一度の渇水の時でも正常な社会が営まれるようにと、ダムなどの水資源開発を行っています。渇水においても20年に一度、30年に一度という大渇水が頻繁に襲ってくることになります。それに対しては、水利用者間の調整協議会で「水のゆずり合い」や「節水対策」でしのいでいくなどの適応策が取られていきます。
緩和策
水未来会議におけるもう一つのテーマが『緩和策』でした。水分野での工夫、努力を、気候変動の緩和に貢献させていこうというものです。
特に、昨年12月のCOP21パリ協定は画期的であったことがシンポジウムのパネリストから指摘されました。約20年前の1997年に採択された京都議定書は、先進国間の温室効果ガス排出量低減の押し付け合いでした。しかし、今回のパリ協定では、途上国、新興国、先進国が、共に脱化石燃料の社会を目指すことになりました。気候変動対策の必要性を、新しい低炭素社会に向けた文明の大転換への機会と捕らえる認識が広がっていきました。
「消極的な危機の押し付け合い」から「積極的な機会の取り合い」になったのです。
未来志向の課題解決を
このような認識であれば、水災害対策は「防災情報伝達システムの構築により、近代化で崩壊した地域コミュニティーの再生」になります。水と衛生の面においては「低エネルギー技術の改良により、エネルギー大量消費社会からの転換と水困難地域の解消の実現」になります。
そして、日本の伝統的省エネルギー技術と水の叡智が、光を浴びていくこととなります。日本は、近代的ハイテクノロジーと伝統的ローテクノロジーの二人三脚で、世界の水問題解決に貢献していくことができるのです。
気候変動に対する適応策、緩和策を「負」としてではなく、新しい文明転換の「正」の機会としていく。「危機を文明転換の機会」とするなど、なかなか人類も捨てたものではないですね。
»国連【世界水の日】記念・水未来会議2016~Climate is Water
»「水未来会議からのメッセージ2016」(PDF)
»提言「低炭素で持続可能な水・物質循環社会へ」(PDF) |