JWF ファンド 2017 フォローアップを実施しました!

 

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JWFファンド2017で建設した井戸から水を汲む児童たち
(バングラデシュ)

 

JWFファンドとは
JWFファンドは、2005年に日本水フォーラムが設立し、独自に運営する助成基金です。発展途上国の水問題解決のために草の根活動を行っている団体を対象に、毎年プロジェクトを公募し、採択された団体には、1プロジェクト当たり1,000 USドルを上限とした支援を実施しています。この基金は、日本水フォーラムの会費や、一般の方からCharity for Waterに寄せられた寄付等により運営されています。

この助成により、過去14年間で170件のプロジェクトを支援し、アジア太平洋、アフリカ、中央アメリカ、南アメリカでの総受益者数は20万人を超えました。

フォローアップとは
JWFファンドは、現場の課題やニーズに効率的かつ効果的に応えることを念頭に活動しています。2015年からは、活動終了から約1年後に課題やニーズにどのような変化が見られたかを把握、理解することを目的に、現地団体の協力を得て、フォローアップ調査を実施しています。

フォローアップ活動を開始して4年目となる2018年度は、JWFファンド2017で支援した7件の実施団体(エチオピア1 件、カメルーン1 件、ケニア2 件、インド1 件、バングラデシュ1 件、フィリピン1 件)に、フォローアップ調査実施の打診をしました。その結果、エチオピアを除く6件の団体から実施承諾の回答を得て、フォローアップ調査を実施しました。

報告書
JWFファンド2017フォローアップ 実施報告書 (日本語・PDF) (英語・PDF)

JWFファンド2017の活動とフォローアップ結果概要

1. ンクム・エキエ村における命のための水供給プロジェクト(カメルーン)
(1) JWFファンド2017 プロジェクト概要

・実施団体:Community Awareness and Development Association Cameroon (CADAC)(#172)
・プロジェクト名:ンクム・エキエ村における命のための水供給プロジェクト
・実施国・地域:カメルーン、中央州
・実施期間:2017年10月~2018年3月
・受益者数: 直接受益者数179人、間接受益者数2,000人
・実施費用:1,594.54ドル (JWFファンド1,000ドル、受益者の負担100ドル、CADAC等の負担494.54ドル)

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カメルーン

実施地の課題
 2014年から2016年にかけて実施された国家世帯統計局の調査によると、他の地域では腸チフスや下痢症など汚染された水に起因する病気の発生が減っているのに対し、実施地では未だこのような病気が流行していることが分かった。ンクム・エキエ村の人びとは、遠く離れた川から水を汲んでいるが、この川は洗濯や皿洗い、水浴びにも使われている。さらに、この周辺には蚊が多く、女性や子どもたちはマラリアにかかる危険に晒されている。このような状況であるが、地域の保健所にも安全な水供給設備はない。

実施事項
1)関係者調整会議の開催
2)水と衛生、健康に関するワークショップの開催
3)井戸を1基建設
4)水質検査の実施

 これらの活動により、ンクム・エキエ村の住民が安全な飲み水を得られるようになったため、汚染された水による病気の減少が期待される。

(2) フォローアップ結果概要

  • 建設した井戸
     訪問の結果、建設した井戸が3つの理由で利用されていない事が分かった。
     一つ目の理由は、井戸の維持管理体制。当初、井戸を効果的に維持管理し、持続性を確保するために維持管理委員会の設立が想定され、村長を含む地域の代表者たちがメンバーとなることを予定していた。しかし、村長と地域の人びとの間で、過去に水の利用をめぐる問題が発生したことがあり、地域の人びとが委員会への村長の関与に不安感を示したことから、委員会がうまく機能していない。このため、井戸はあまり使われていない。
     二つ目の理由は、井戸の水が良好ではないこと。ただし、井戸を使う住民は、井戸の水を飲み水や生活用水に利用している。また、農業にも井戸の水は利用されている。
     三つめの理由は、ヘルスセンターの移転。ヘルスセンターがプロジェクトの協力者であったが、運営側の事情によりこの地域での活動をやめ、移転した。

このような事態に対応するため、CADACが責任を持って次の2つの対策を行う予定。

  • 維持管理員会の設立:CADACは、プロジェクトの持続性を確保し、活用できるよう、地域水管理委員会を設立する。また、CADACがこの委員会の設立と、今回の対立やその他発生する可能性のある事態への適切な対応が完了するまで、調整役を担う。
  • 井戸の清掃:CADACは、井戸の清掃と井戸が使えるようにするため技術者を手配する。これは乾期(5月ごろ)が終わる前に、完了する予定。

 

2. 小学校への衛生設備建設と衛生に関する啓発活動(ケニア)
(1) JWFファンド2017 プロジェクト概要
・実施団体:Renewed Hope Group (RHG)(#054)
・プロジェクト名:小学校への衛生設備建設と衛生に関する啓発活動
・実施国・地域:ケニア、カカメガ郡
・実施期間:2017年10月~2018年2月
・受益者数:1,200人(女子児童800人、男子児童400人、教師20人)
・実施費用:1,339ドル(JWFファンド1,000ドル、受益者より199ドル、RHGより140ドル)

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ケニア

実施地の課題
 実施地域に唯一あるエシル小学校には1,200人の児童が通っている。しかし、トイレが2基しかなく、あと半年で肥溜めが一杯になってしまう。休み時間にはトイレに長蛇の列ができ、授業に遅れる児童や、授業に間に合うように周辺で野外排泄をする児童もいる。彼らは衛生に関する知識がなく、小学校には手洗い場が無い。このため、少なくとも4割の生徒が、不衛生による病気に毎年かかっており、地域の保健所が定期的に学級閉鎖をさせている。

実施事項
1)プロジェクト実施委員会の設立
2)VIPトイレ*1 3基と小便器の建設
3)手洗い場4基の設置
4)衛生習慣に関する啓発活動を1回実施
5)維持管理体制の構築

*1:VIPトイレとは、Ventilated Improved Pit Latrineの略称。臭気及びハエの発生を防止するために換気管を設置した衛生設備。

これらの活動により、学校に通う児童と教師が継続的に衛生設備を使用できるようになるため、学校の学習環境が改善されることが期待される。

(2) フォローアップ結果概要

  • 建設したVIPトイレ3基と小便器1基、手洗い場
    – VIPトイレ3基と小便器、手洗い場は、破損等は見られず良好な状態である。定期的に清掃されており、学校に通う児童と教師が、これらの設備を使用している。
    – 手洗い用の水は、学校の雨水貯留タンクか、近隣の湧水保護設備から汲んできている。
  • 維持管理体制
    – 建設したVIPトイレと小便器、手洗い場の維持管理は、校長、理事長、秘書、財務を兼任する会計役から構成されるエシル学校の理事会が実施している。
    この理事会が1200人の児童から維持管理費用を年に1回集め、トイレの修理費や汲み取りの費用として積み立てている。
    – 定期的な清掃は、児童と用務員が行っている。女子児童6名と男子児童3名が交代制で当番になり、それぞれ月曜日、水曜日、金曜日の朝にVIPトイレ3基と小便器を清掃している。また、用務員は3人一組で土曜日の朝、VIPトイレと手洗い場の清掃を行っている。清掃用の水汲みや個室内の清掃を、当番の中で分担しながら行っている。
  • 衛生習慣の変化
    – 学校にVIPトイレができたことにより、児童はトイレを使うようになり、野外排泄を避けるようになった。学校の近くの林での野外排泄は大幅に減り、ほとんどなくなった。
    – 児童たちは用を足した後や手が汚れているときに手を洗い食事の前に食器を洗うようになった。
  • 受益者の変化
    – 衛生設備ができたことと衛生習慣が変化したことにより、健康状態に良い変化が見られるようになった。児童がかかっていた汚染された水に起因する病気は劇的に減り、野外排泄の悪臭はしなくなった。
    – 衛生設備ができたことと衛生習慣が変化したことにより、エシル小学校の運営と教育環境に良い変化が見られるようになった。悪臭や、汚染された水に起因する病気が減少したことで、学習環境と登校率が改善され、児童が学校で過ごす時間が増えた。加えて、公衆衛生官から指導を受けることが減った。

 

現場からの声

  • Jairus Wanyonyiさん(14歳、男性、エシル小学校に通う児童)
    – トイレと手洗い場を使っています。素晴らしくてとても評価しています。プロジェクトの前、古いトイレに並ぶことを避けて学校の周りの林で用を足すことは、私にも他のほとんどの児童にとっても習慣となっていて、驚くことではありませんでした。でも、それが間違っていたと分かりました。
  • Nafula Nabwileさん(12歳、女性、エシル小学校に通う児童)
    – トイレと手洗い場を使っています。いつもトイレと手洗い場を使えてとても嬉しいです。これまで用を足した後に手を洗ったことがなかったので、新しい経験でした。不衛生な古いトイレと、行列に並ぶのはとても嫌でした。
  • Janet Wasikeさん(35歳、女性、エシル小学校の教師)
    – プロジェクト完了後、自分自身の健康状態と衛生面での学校環境が良くなったと思います。汚染された水に起因する病気にかかることがほとんどなくなり、健康になってエシル小学校での教師としての義務を果たせるようになったと感じています。エシル小学校で教えることが楽しくなりました。児童の下痢症や野外排泄による悪臭といった問題が減り、トイレを待つ長蛇の列がなくなったことで、児童が休憩時間内に教室に戻れるようになったからです。プロジェクト完了後、不衛生により学級閉鎖になったことは一度もありません。
  • Christine Sandeさん(32歳、女性、地方行政機関の水衛生部門職員)
    – プロジェクト完了後、私自身の健康状態だけでなく、学校の衛生環境にも良い変化がありました。このプロジェクトはケニアのVision 2030*2と、すべての市民のための適切な衛生を確保するというケニア国憲法に一致しています。プロジェクト実施後は、エシル小学校は衛生設備の不足を改善しつつあり、衛生に関しては良い事例となっています。
    *2:Vision 2030は、ケニアの2008~2030年における国の発展計画。ケニアを2030年までに新しく産業化させた「全国民が高い生活水準を享受する産業中所得国」に変えることを目標にしている。
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2017年に建設されたVIPトイレ

手洗い器で手を洗う児童


3.
 湧水の保護によるルヒヤヘ地域の安全な水へのアクセスの促進(ケニア)
(1) JWFファンド2017 プロジェクト概要
実施団体:Ufanisi Women Group (UWG)(#031)
・プロジェクト名:湧水の保護によるルヒヤヘ地域の安全な水へのアクセスの促進
・実施国・地域:ケニア、ブンゴマ郡
・実施期間:2017年10月~2018年2月
・受益者数:750人(女性150人、男性150人、子ども450人)
・実施費用:1,389ドル(JWFファンド1,000ドル、受益者の負担258ドル、UWGの負担131ドル)

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ケニア

実施地の課題
 実施地には150世帯が住んでおり、住民たちは遠く離れた湧水を水源として使用している。しかし、この水源は保護されておらず、ごみや野外排泄による糞尿などが流れ込むため、ひどく汚れている。この水を煮沸などせずに使用しているため、住民たちは下痢症にかかっており、死亡する人もいる。村の約半数が病気の治療のために毎月診察所を訪れているほか、時々発生する病気の流行が原因で、保健所が地域の小学校を学級閉鎖することもある。

実施事項
1)プロジェクト実施委員会の設立
2)湧水保護設備の建設
3)衛生と維持管理に関するトレーニングを実施(3日)
4)維持管理委員会の設立
5)水質検査の実施

 これらの活動により、ルヒヤヘ地域の住民150世帯750人が安全な飲み水を利用できるようになったため、汚染された水に起因する病気の減少が期待される。

(2) フォローアップ結果概要

  • 湧水保護設備
    – 建設された湧水保護設備は、計画通りに機能している。また、受益者たちは適切に設備を利用している。当初の予定通り、この設備からルヒヤヘ地域の住民750人が、年間を通じて安全な飲み水を得ている。以前のように、汚れた池の水を飲み水や生活用水に利用している住民はいない。
  • 維持管理委員会
    – 維持管理委員会のメンバーは、当初150世帯から選ばれた10名に加え、プロジェクト完了後に10名が加わり、計20名に拡大された。受益者が属する全グループが委員会に参加すること、修理や維持管理に充てられる資源を充実させること、プロジェクトの持続性を確保することを目的に増員が図られた。
    – 維持管理委員会は現在も活動を続けている。湧水保護設備の適切な維持管理のため、湧水設備を利用する150世帯から少額の利用料を徴収するほか、集めたお金を設備の修理や管理に充てられるように保管している。
  • 人びとの変化
    – プロジェクトの際に住民たちへ伝えられた、健康と衛生の重要性に関するメッセージが、住民に理解され、行動に移されている。住民たちは、湧水保護設備から汲んだ水を飲む前に、沸騰、塩素添加、太陽光消毒等を行っている。水を保存する容器も水を汲みいれる前に洗っている。
    – 湧水保護設備が建設されてからは、汚染された水に起因する病気の流行が治まった。度重なる治療費が減ったことで、住民たちは以前より健康になり、余計な支出が減った。

 

現場からの声

  • Anna Malobaさん(女性、地域保健センターのボランティア職員)
    – プロジェクト完了後、地域の人びとの水の利用に良い変化がありました。建設された湧水保護設備は、ルヒヤヘ地域に住む150世帯と近隣地域の住民が利用しています。乾期も含め、年間を通じて安全できれいな水の水源として頼りになり、多くの世帯が利用できています。地域の住民たちは、汚染された水の利用が良くないことだったと理解しています。この根本的な変化が、下痢症の根絶につながっています。住民たちは、遠く離れたため池から汚れた水を汲むことや下痢症の治療のために費やしていた時間を、農業などの生産的な活動に充てています。結果として、彼らの社会経済的な状況が向上しています。
  • Sarah Mumbuaさん(女性、小作農家)
    – 建設された湧水保護設備を使っています。以前はため池の水がひどく汚れていましたが、この設備から得られる水は澄んでいてきれいで、汚れていません。
    – 以前は水を汲むために毎日2時間ほどかかっていました。今は、家の近くで安全できれいな水を年中得られるようになりました。
  • Geoffrey Asombiさん(男性、コミュニティ・リーダー)
    – 湧水保護設備を使っています。この設備から湧き出るきれいで新鮮な水を汲むのが本当に楽しいです。この設備ができる前は、一人で水を汲みに行くことが女性や少女たちの役目でした。ヤギの面倒を見る男性や少年たちが、女性や少女と一緒に水汲みのために長い列に並ぶことや、遠くまで汚れた水を汲みに行くことはとても恥ずかしいことでした。しかし、湧水が保護された後、多くの男性や少年たちは、生活の改善には男性と女性との共同努力が必要であることに気づきました。私は湧水保護設備を大切にしています。この設備は、安全な水源から飲み水を得られているという自尊心を向上させてくれました。私はこの水を家畜の飲み水や、私たちの食事や洗濯に利用しています。
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建設された湧水保護設備から水を汲む少年

インタビューを受けるMumbuaさん(左)

 

 

4. 井戸の修繕と衛生、維持に関する啓発活動と青年の維持管理能力向上トレーニング(インド)
(1) JWFファンド2017 プロジェクト概要
実施団体:Rural Action In Social Emancipation (RAISE)(#047)
・プロジェクト名:井戸の修繕と衛生、維持に関する啓発活動と青年の維持管理能力向上トレーニング
・実施国・地域:インド、アーンドラ・プラデーシュ州
・実施期間:2017年10月~2018年3月
・受益者数:230人(女性80人、男性100人、子ども50人)
・実施費用:1,030ドル(JWFファンド1,000ドル、RAISEの負担30ドル)

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インド

実施地の課題
 ジョセペット村には、数十年前に建設された浅井戸と掘り抜き式井戸がある。しかし、浅井戸は住民が適切な使い方を知らないために汚染され、開口式で、赤痢や下痢症、肝炎といった水に関連する病気の発生要因となっている。また、掘り抜き式井戸は経年劣化により、汲み上げた水に泥が混ざってしまう。

実施事項
1)既存井戸5基の修繕と洗浄
2)水と衛生に関する啓発活動の実施
3)維持管理トレーニングの実施
4)水質検査の実施

 これらの活動により、ジョゼペット村の住民たちが安全な飲み水を得られるようになった。汚染された水による病気の減少が期待される。

(2) フォローアップ結果概要

  • 修繕・洗浄した既存井戸
    – 修繕・洗浄した既存の井戸5基すべてが、正常に機能している。井戸から汲み上げた水の水質と水量は、プロジェクト完了時から変化していない。
    – 受益者230人が、当初の計画通りに井戸を使用している。彼らは、一年を通じて必要な量の水を得られている。
  • 維持管理体制
    – 受益者により創設された運営委員会は活発に活動しており、井戸5基の維持管理を行っている。
    – プロジェクト完了後、維持管理トレーニングを受けた村の青年たちが、井戸5基の清掃を1度行った。
  • 受益者の変化
    – 井戸の修理によって、住民たちはよりよい質の水を汲めるようになり、水を無駄にしないように気を付けるようになった。
    – 健康状態が良くなったことで、子どもの登校率が向上した。また、保護者たちの健康状態もよくなり、汚染された水に起因する病気の診察や薬代が減った。余ったお金を使い、より良い食事をとることができている。

 

現場からの声

  • SK. Naim Bashaさん(21歳、男性、維持管理トレーニングを受けた村の青年)
    – 修理・洗浄された井戸を使っています。状況は以前と変わり、すべてがきれいになり整頓されました。
    – トレーニングで学んだことを活かし、村の隣にある井戸を修理しました。報酬を得ることができ、嬉しいです。
  • B.Veronikaさん(46歳、女性、運営委員会のメンバー)
    – 井戸に滑車がついたおかげで、水汲みがとても簡単で楽になりました。
    – (運営委員会の役割として)井戸5基の検査を月に1回、井戸の清掃を月に2回行っています。
    – プロジェクトの完了後、住民たちの安全な飲み水や衛生習慣への意識は変わりました。井戸の利用に責任感を持つようになりました
  • Malliswariさん(38歳、女性、井戸の利用者)
    – 井戸を定期的に使用しています。いまは井戸の水はきれいで、ごみも錆も混じっていません。
    – プロジェクト完了後、住民の意識にはたくさんの変化がありました。みんなが井戸の維持管理に責任感を持っています。
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修繕・洗浄した井戸と村の女性たち

維持管理トレーニングを受けた村の青年たち

 

5. 衛生設備と水供給設備の建設による子どもの教育環境の確保(バングラデシュ)
(1) JWFファンド2017 プロジェクト概要
・実施団体:BASCO Foundation(#157)
・実施国・地域:バングラデシュ、マグラ県
・実施期間: 2017 年 10 月~2018 年 3 月
・受益者数: 80 人 (女児 24 人、男児 16 人、女性 40 人)
・実施費用:1,365 ドル(JWF ファンド 1,000 ドル、受益者の負担 125 ドル、BASCO Foundation の負担 240 ドル)

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バングラデシュ

実施地の課題
 ロイガン村には公立や私立の教育施設がなく、地域住民は、自ら小学校を運営しており、恵まれない40人の子どもが通っている。この小学校は政府による支援を受けられず、適切なトイレや水供給設備がない。このため、児童たちは野外排泄をし、汚れた水を飲んでいる。特に女児たちは野外排泄に抵抗があり、学校に行きたがらない。このため、女児の中退率は高く、母親たちは女児を学校に行かせることに消極的になっている。

実施事項
1)ピットラトリン*3とハンドポンプ付き井戸を各1基建設
2)水衛生委員会の設立
3)設備の利用と健康に関する啓発活動を2回実施
4)水質検査の実施

3:ピットラトリンとは、地面に竪穴を掘って上屋を設置した衛生設備。

 これらの活動により、対象地域の住民が安定して水を利用できるようになったため、生活の向上が期待される。

(2) フォローアップ結果概要

  • ピットラトリンとハンドポンプ付き井戸
    – 学校に建設されたピットラトリンとハンドポンプ付き井戸は、学校に通う児童たちが利用している。ほとんどの児童が学校に通うようになり、保護者たちは子どもを学校に通わせることを意識している。飲み水やトイレの利用に問題は発生していない。女子児童たちはこれまで野外排泄をしていたが、安全な場所であるトイレを使うことが出来ている。
  • 維持管理体制
    – 教師は児童7人のグループを作った。彼らは、週に何日かトイレと井戸の清掃を行っている。
  • プロジェクト実施後の変化
    – ほとんどの児童が学校に通うようになった。
    – プロジェクト完了後、これまで汚染された水に起因する病気は発生していない。
    – この地域の住民たちが、衛生的なトイレの使い方を意識するようになったほか、プロジェクトを通じて意欲的になった。彼らは以前の習慣は良くないものであったと理解している
  • その他
    – BASCO Foundationのスタッフは、月に2回プロジェクト実施地を訪問し、児童の保護者や地域住民たちとの会合を行っている。
    – 地域住民たちは、子どもたちが安心してトイレで用を足せるようになってとても喜んでいる。子どもたちは保護者に低コストのトイレを家に作るよう促しており、その結果5つのトイレが設置された。

 

現場からの声

  • Khadija Khatunさん(学校に通う女子児童)
    – 以前は学校にトイレがない等の衛生上の問題があったため、不定期にしか学校に通っていませんでした。定期的に学校に通うことが出来るようになり、母親の付き添いも必要がなくなったのでとても嬉しいです。
  • Marufa Khanomさん(学校に通う女子児童)
    – トイレの問題がなくなり、安全な水を飲めるようになったので、定期的に学校に通っています。学校の先生から、いつも野外排泄をしないこと、池の水を飲まないようにと教えられていました。日本水フォーラムは、私たちに安全な飲み水と衛生的なトイレを与えてくれました。この支援に心から感謝します。
  • Jamila Khatun さん(女性、学校教師)
    – 女子児童が野外排泄をする心配から解放されました。蛇に咬まれたり虫に刺されたりする危険が減ったからです。子どもたちのためのトイレを設置してくれた日本水フォーラムに感謝します。私たち教師もこのトイレを使っています。
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学校に通う児童たちと教師

ピットラトリンを清掃する女子児童

 

6. 雨水貯留プロジェクト(フィリピン)
(1) JWFファンド2017 プロジェクト概要
実施団体:Asset-Based Community Development with Equity Foundation (ABCDE Foundation)(#108)
・プロジェクト名:雨水貯留プロジェクト
・実施国・地域:フィリピン、北サンボアンガ州
・実施期間: 2017年10月~2018年3月
・受益者数:240人(女子児童123人、男子児童109人、教師8人)
・実施費用:1,121ドル(JWFファンド1,000ドル、ABCDE Foundationの負担121ドル)

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フィリピン

実施地の課題
 実施地は山地にあり、湧水や小川等の水源から遠く離れている。水を汲むためには、1.5時間ほどかけて山を下らなければならない。特に女性にとって、日常的に水を汲みに行き、洗濯などをすることは困難である。また、この地域では常に水が不足しており、住民の健康や衛生、収入面に悪影響を及ぼしている。

実施事項
1)事前説明の実施
2)雨水貯留タンク2基の建設
3)管理組合の設立
4)雨水の管理等に関するトレーニングの実施

 これらの活動により、対象地域の住民が安定して水を利用できるようになったため、生活の向上が期待される。

(2) フォローアップ結果概要

  • 小学校の雨水貯留タンク
    – 小学校に建設された雨水貯留タンクは計画通りに機能している。また、タンクの容量はこの学校が必要とする水の量を十分に満たしている。主に学校に通う児童が利用している。需要が最も高くなるのは、4月から6月の乾期の間である。
    – タンクの維持管理は、生徒の保護者と小学校の教師が行っており、タンクと配管等の清掃は小学校が雇った清掃業者が実施している。
  • 地域センターの雨水貯留タンク
    – 地域センターの雨水貯留タンクは、適切に機能しているが、タンクの水は地域住民の需要を満たしていない。特に4月から6月の乾期の間は需要が高く、住民たちは水が足りない期間は地域から4キロ離れた水源まで水を汲みに行っている。
    – 地域の管理組合が地域センターのタンクを維持管理し、そのメンバーが交代制で清掃を行っている。
  • 地域の菜園
    – プロジェクト完了後、住民たちは家庭菜園を作った。この地域に住む人びとの約6割が自分の菜園を持っており、さまざまな野菜を定期的に育て、収穫することが出来ている。
  • 受益者の変化
    – 雨水貯留タンクにより、小学校の児童と地域住民が、安定して安全な飲み水を得られるようになった。

 

現場からの声

  • Mary Joy Patadillaさん(37歳、女性)
    – 雨水貯留タンクの水は、自宅と菜園で使っています。きれいな水を得られるようになって、とても嬉しいです。タンクの近くに住んでいるので、遠くに住んでいる人よりは簡単に水を得ることができます。
  • Fidel Sayreさん(46歳、男性)
    – 地域センターの雨水貯留タンクを使っています。以前は小川まで水を汲みに行っていましたが、いまはすぐに水を得ることが出来ます。ですが、水が足りなくなる時もあるので、あと2つか3つタンクが必要だと思います。
  • Maredel Segayoさん(32歳、女性)
    – 地域センターの雨水貯留タンクをよく使っています。ここから水を得られるようになって、とても助かっています。
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小学校に建設された雨水貯留タンク

住民の菜園

日本水フォーラム会員の皆さまをはじめ、Charity for Waterにご寄付いただいた皆さま、現地パートナー団体、対象地域の住民の皆さまなど、多くのご支援ご協力により本プロジェクトを実施することができました。ご支援いただき、ありがとうございました。

(報告者:マネージャー 石原小枝、副マネージャー 郡司晃江)

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